2019年5月7日は奇跡が起きた日でした。
それはサッカーUEFAチャンピオンズリーグの準決勝が行われた、イングランド北西部にあるリバプールの本拠地アンフィールド。
敵地での1戦目を0‐3で落としたリバプールは、ホームで行われるこの2戦目を4点差以上で勝たなければならない。
エースのサラーやフィルミーノが出場できない飛車角落ちのリバプールに対するのは、世界最高の選手メッシが率いるバルセロナ。
試合前のサッカー分析サイト『ユーロ・クラブ・インデックス』がはじき出したリバプールが勝利する確率はわずか「3%」、どう考えても4点差で勝つことは不可能ではないかと誰もが思っていました。
そんな中で始まったこの一戦はキックオフから凄い試合でした。リバプールの選手たちはボールを保持するバルセロナの選手に激しいプレスをかけ続けます。
一戦目で失敗したやり方であり、バルセロナはその戦いを予想していたはずですが、何かこの日は熱量みたいなものが明らかに違いました。
こんなペースで90分もできるのか?、プレスをかけるということは相当な体力の消耗と、プレスをかいくぐられたら即ピンチになるという諸刃の剣です。
そして試合は進み、熱狂的なサポーターが埋め尽くすスタジアムの後押しもありリバプールは前半に1点をとります。勢いに乗ったチームは後半にも3点を取り、誰もが予想しなかった奇跡の大逆転をバルセロナ相手にやってのけました。
”アンフィールドの奇跡”と言われているこの試合ですが、その試合で影のMVPと注目されたのが、外に出たボールを拾うボールボーイでした。
3点を取りあと1点で大逆転というコーナーキックの場面でした。ボールボーイの少年がものすごいスピードでコーナーキックを蹴る選手にボール渡します。まだコーナーキックを蹴らないと油断しているディフェンダーを尻目に素早く蹴られたボールが奇跡の大逆転のゴールにつながりました。
奇跡がおきることには理由があるのかも知れません。
『 ミラクルガール 』
奇跡とは「人間の力や自然法則を超え、神など超自然のものとされるできごと。」とWikipediaに書いてありました。
めったに起きないから奇跡であり、起こそうと思って起こせないから奇跡ですが、奇跡をおこす方法がもしかしたらあるんじゃないか?と近頃は思うようになりました。
星島美子さんと初めて会ったのは2019年のことでした。
7月13日、岡山の倉敷市の美観地区にある倉敷物語館にて特定非営利活動法人『つくぼ片山家プロジェクト』の主催で行われたちゃんとちゃんとの学校のイベントに来ていただいた星島さんは、初対面の私にも明るく優しく接していただいて、なんて人懐っこくて魅力的な人なんだろうと思ったことを覚えています。
その後、東京で開催したちゃんとちゃんとの学校の100歳図書館にも岡山から来ていただいたり、今も仲良くしていただいています。
ご縁があってまだ短い期間ですが、星島さんと会う人は自然と笑顔になったり元気になったりします、そういう瞬間を幾度となく見てきました。
私も星島さんと話をしているとなんて言ったらいいのか分からないですが楽になります。
人生はシンプルなんだよと教えてくれているような気がします。
5月6日、星島さんから電話がありました。
「 幸田さんが明日来るんよ、あんたいまどこにおるの?」
「仕事で高松にいますよ」と伝えました、それからなんやかんやで翌日に幸田さんと私とで、久しぶりに星島さんに会いにいくことになりました。
翌日は仕事を早く切り上げて高松から電車に飛び乗り、綺麗な瀬戸内海を見ながら星島さんのご自宅に向かいました。
先に到着していた幸田さんと合流して、まず地域の方々の憩いの場所となっている特定非営利活動法人つくぼ片山家にお邪魔しました。
ちゃんとちゃんとの学校でもお世話になっている代表の滝口美保さんに再会し、お庭に生えているスギナで作ったスギナ茶をごちそうになりました。
滝口さんから星島さんは裏の駐車場にいるとお聞きし、そこで久しぶりに星島さんにお会いすることができました。
久しぶりに会った星島さんは汗ばむ陽気の中、駐車場の草むしりをしていました。その姿を見て内心ほっとしました。
最初に星島さんのご家族がされているあきちゃん農園を見学させていただきました。
倉敷地方いちご共進会で最優秀賞を受賞したといういちごは何回か星島さんに送っていただいたことのあるいちごですが、やはりいつも以上にみずみずしく格別でした。
ご家族からいちご作りのお話を聞いていると、農園の横にある自販機でいちごを買ってくれた星島さんが笑顔で言いました
「おーい、中で食べよう」
『 種を蒔く 』
「私は18歳なのよ」
「そうなの?」
「来年は28歳なの」
「え?、なんで?」
「逆さまにしてみて」
「あー、そういうことか」
「そう81歳だよ」
これは星島さんといちごの自販機にいちごを買いに来てくれた子どもとの会話なんですが、星島さんは買いに来てくれた人と必ず会話をするんだそうです。
「家族で愛情込めてつくったいちごですよ、私の愛情も少し入ってますよ」「遠いところから来てくれてありがとうございますね、また来てくださいね」そんな一言があると、またここで買いたくなる気持ちになる気がします。
そんな話を聞いたり、みんなで楽しくおしゃべりをしました(ほとんど星島さんですが)
そして星島さんがさらっと言った言葉が印象的でした。
「種を蒔かなきゃだめだ」
星島さんは長く続いていた抗がん剤の治療が4月の末に終わり、その治療の結果が出るのを待っているという状態なんだそうです。
そんな星島さんの印象的な話があります。
星島さんは42歳の時にがんになり、あと数か月の命と宣告されます。それから星島さんはご主人とスイスに行ったんだそうです、残りの時間を楽しむしかないというお気持ちもあったのでしょうか。
そんなスイスに行っているときの話です。レストランでの食事中に音楽が流れ始めると向こうの人は自然に立ち上がって踊り始めたんだそうです、だけど慣れていない日本人は誰も踊ろうとしない。
でも星島さんは立ち上がって踊ったようです、まわりのみんなは驚いたみたいですが「踊り方も知らないのに踊ったのよ、楽しかったわ〜、」とニコニコとお話してくれました。
星島さんらしいなぁと聞いていましたが、そのときのお気持ちを考えると単に楽しかったと言える状況では無いだろうとは想像できます。
もしかしたらそのときに何かが変わったんじゃないのかなぁと、意識されていたのかどうかはわかりませんが、未来への種を蒔いていたのかも知れないなぁと勝手に思いました。
そして星島さんのがんは奇跡的に消えていたようです。その後もたくさんの奇跡を起こしてきた星島さんは18歳のミラクルガールです。
あらゆるものは目に見えない無数の糸のように繋がっているのもしれません、だから今日の種蒔きはすぐには芽が出なくても、いつの日かの芽生えに繋がっていてるんじゃないでしょうか。
星島さんの強い想いや周りの人に対する深い優しさが、種として根を張りぐんぐん成長して、あちらこちらで奇跡のような花を咲かせているような気がしてなりません。
リバプールは昨年の7月7日、17歳のオークリー・キャノニエとプロ契約を結んだことを発表しました。
彼はあのアンフィールドの奇跡で活躍したボールボーイの少年です。あの時の種蒔きが実を結んだのでしょうか。
星島さんの奇跡はまだまだ続きます、いつも励ましてくれてばかりの星島さんを今回は元気づけてあげたい気持ちでいっぱいです。
とにかく星島さん、また会いに行きますね。