スーツを着るのが一番嫌な季節です、満員電車に乗るのもいつも以上に嫌な季節でもあります。
いっそみんながTシャツとサンダルで過ごせば、少しぐらいは優しくなれるんじゃないかと思います。
この前牛丼を食べに行ったときのこと、70代くらいの男性の店員さんがそれはそれはゆっくりと働いていらっしゃいました。
これは時間がかかりそうだなと覚悟しながら見ていると、30代くらいの店長さんらしき人に怒られながら丁寧にお盆をふいて味噌汁を載せて私の頼んだ牛丼を用意してくれていました。
さあやっと持って来てくれると思っていたら、突然店に入ってきた人が大きな声で番号を叫びました。入り口を振り返って見てみると街でよく見かける宅配の人の姿が、店員さんは慌てて番号を間違えないように何度も確認して牛丼の入った袋を手渡しました。
途中からは心配になってじっと見守っていました。そしてどうやら無事渡せたみたいで良かったなぁと一安心していたら、今度は「モバイルで頼んだのにまだ来てない」と違うお客さんからの声が聞こえてきました、なんだかんだで何回謝ったのか分からないほど謝った店員さんがかなり遅れて私のところに牛丼を運んできてくれました。
「遅くなってごめんなさいね。」と渡された牛丼は乾いた肉とぬるい味噌汁でしたが、いつもより有り難みがプラスされていた気がしました。
『 ブッフォン 』
命に関わるような大きな事故が無ければ、おそらくプロに行くレベルのゴールキーパーだった彼がよく言っていました。「一番凄いのはブッフォンです」
ジャンルイジ・ブッフォンはイタリアのゴールキーパーで、身体能力がずば抜けて高いわけでもなく、スーパーセーブが多いわけでもなく、ただ史上最高のゴールキーパーだと言われています。
友人の元ゴールキーパーは「ブッフォンの素晴らしさはポジショニングです。常にいるべき場所にいるからファインセーブが少ないんです。」なるほどそう言われてみるとそうかもしれない、いる場所にいるということは一つのミスも許されないゴールキーパーにとっては特に大切です。
現代のサッカーは選手の走行距離からトップスピードや、1対1の強さまで、ありとあらゆるデータがあります。
ブッフォンより身長や反応速度もデータ上では優れているゴールキーパーはたくさんいるはずですが、データでは表せないないものがブッフォンにはあります。
とくにその瞬間にそこにいるというようなポジショニングは教えてもらえるものではなく、長年の経験からしか身につかないと思います。
そんなブッフォンがいつのまにやら45歳になり、28年の選手生活を終え引退を発表しました。
いつもそこにいる人がいなくなると思うと、淋しい気がします。
『 どっちに合わせる? 』
マイナンバーカードと保険証を一体化するという、いわゆる “マイナ保険証” のニュースがよくとりあげられています。
マイナ保険証を導入すると、通院時のマイナ受付利用による自動受付や、お薬手帳としての利用、また自身の医療情報の確認もできるみたいです。まあデジタル化、効率化を目指しているようですが、なんだかうまくいっていないようです。
やろうとしていることは分かりますが、利用者を無視してなぜそんなに急いでやろうとしてるのかは疑問しかありません。特に医療に関することは人によっては命にもかかわる大きな問題です、もっといいやり方があるはずです。
いまは色々な問題を見るたびに「どちらに合わせるのか?」と突きつけられているような気がします。
木を切って商業施設を建てたり、山を削って太陽光パネルを作ったり、それはより良い暮らしのためだと言いながら進められています。
そもそもより良い暮らしとは何なのか?美味しいものを食べたり、欲しいモノが手に入ったりいい家に住むことなんでしょうか? 仮に便利で何不自由ない暮らしが手に入ったとして、その先には何があるんでしょうか。
市民が望むものと行政機関や企業がしようとしていることは同じでありませんが、一方で何をするにもコストはかかります、国や自治体にも予算があり企業にも利益が必要でそれを追求することも当然です。
ただ人の暮らしに関わる時にはそれだけでは不十分な気がします、誰かの生活にとっては必要なもの、その一部まで奪うようなものは違うなぁと思います。
”人はパンのみにて生きるにあらず” なんでしょうか。
『 欲望の対象と欲望の原因 』
「ウサギを狩る人はウサギが欲しいわけじゃない」だから今から狩に行く人に、ウサギをあげたとしても喜ぶ人はいない。
つまりウサギは欲望の対象で、欲望の原因は気晴らしが欲しいんだ、と最近読んだ本に書いてありました。
わかったようなわからない話ですが、人は何かを手に入れたら豊かになれる、幸せになれると考えがちですが、本当はそこまでの過程においていかに熱中できるかということのほうが大切なんだそうです。
それは何かを手に入れたところで幸せになれるなんてことはない、ということをどこかで分かってしまっている自分がいて、その事実を自分自身に気づかせないためにも熱中することが必要なんだそうです。
2023年4月12日に総務省が発表した人口推計によると2022年10月1日時点で高齢化率(65歳以上の人が人口に占める割合)は29.0%、75歳以上は15.5%になり共に過去最高を記録しました。
デジタル化を推し進める中、日本人の3人に1人はだいたい65歳以上です。これからは牛丼屋さんだけではなく様々な分野で65歳以上の方が活躍する場面は増えていきます。
だからといって高齢の人にすべてを合わせるとか、仕組みを変える事は難しいと思います。
ですが、これからは色々な意味でもっと優しい社会になっていったほうがいい気がします。それは仕組みではなく個人個人に委ねられている部分が多くあるようにも思います。もっと優しくなりたいもんです。
ジブリの映画『君たちはどう生きるか』を観ました、なんだかよく分からない映画でしたが、何か感じることが大切な映画なんだろうと思いました。
どこに向かっているかも大事ですが、今もそれ以上に大切です。