『 唇歯輔車 』

暑い、とにかくむし暑い、6月ってこんなに暑かったかなぁ、とうなだれています。

気温よりもこのジメジメとした湿度が嫌いです、体力と元々ないやる気をさらに奪っていきます。

この前、立ち話をしている学生が道を塞いでいるところに出くわしました。

こんな季節はいつも以上にイライラしてしまいますが、その学生たちをよく見たら、うちの子供と同じくらいの年頃だなぁと、そう思ったらなぜだか、あの年代は仕方ないよなぁ、とか思ったりするわけですから、本当に人間っていい加減なもんです。

 

『 シルバー民主主義 』

「今のままじゃいずれダメになる、だから新しいチャレンジをしないといけないと思います」とかなり昔に上司に言ったことがあります、柄にもなく。

顔面から黒光りするブラック企業の上司は「今を頑張らない人間に先のことを考える資格なんてない」と相手にしてくれなかったことがありました。

今さえ良けりゃいいのか?未来に力を入れるべきなのか?そりゃあいろいろな考え方があるんだと思いますが、内心思っていたことは「両方やらないとダメだろ、このやろう」でした。

そんな話はさておき、円安と値上げと節電と、連日そんなニュースばかりを目にする日々ですが、そんな私たちの生活のこれからを左右するのは、やはり政治です。

内閣府が6月14日に公表した2022年版の高齢社会白書によると、日本の65歳以上の人口は3,621万人、高齢化率(65歳以上が人口に占める割合)は28.9%でした。どうやら今年も日本が世界一の高齢化率の国になりそうです。

少子高齢化の時代は有権者に占める高齢者の割合が増えます、そしてそれは高齢者の政治への影響力が増大する結果へとつながります。こういう現象を『シルバー民主主義』と言うようです。

日本に限らず、民主主義の高齢化が進む先進国では見られることですが、世界一の超高齢社会の日本においてはより大きな影響があります。

民主主義は民意を反映するべきですが、選挙に当選したい政治家は多数派の高齢者層に配慮した政策をとりますし、その結果として少数派である若年・中年層の意見が政治に反映されにくくなります。

NHKの選挙WEBによると3年前の参議院選挙では20歳代の投票率が30.96%だったのに対し、60歳代の投票率は63.58%とだったようです。

若い世代の投票率が低いという問題は政治に関心がないことや、投票したい政党が無かったりするということはあるものの、はっきりいってやる前から多数決で勝てないわけですから、なかなか難しい問題だともいえます。

 

シルバー民主主義』の著者である八代尚宏さん(昭和女子大学副学長)はGLOBE +の記事の中で

「日本のお年寄りは正月、孫にお年玉をあげるのを楽しみにしています。それなのに実際、社会保障制度では孫の世代から、お年玉を取り上げているのです。最大の問題は、多くの高齢者がその事実を認識していないことなのです」と話されています。

まあどれだけ高齢者の方の意見が反映されているかどうかは別の問題だとは思いますが、これから先のことを考えると大きな問題の一つではあると思います。

 

『 唇歯輔車 』

もし日本が若い世代ばかりだったとしたら、例えば20代が多数派を占めるなら大学は学費が無料とか、PCやスマホは無料でWi-Fi使い放題とかそんな制度ができたりするのかもしれません。

30代なら子育てや住宅に関する支援を手厚くしたり、17歳までは選挙権はないですが10代ならゲームやYouTubeを好きなだけ見れる法案とか、それぞれの世代によって必要なものは違います。

そしてその世代ごとの意見は多世代からは理解がされにくいものだと思います。

とはいっても誰しも若い頃があり、年をとらない人はいないわけですから、自分さえよければ、今さえよければという考え方を少しでも変えていくには、世代間を超える想像力が必要になるのではないでしょうか。

 

コレクティブハウスはスウェーデンで1970年代から始まり、現在世界中に広がっている居住スタイルの名前です。

建築家のスヴェン・マルケリウスが、ノーベル平和賞受賞者のアルバ・ライマル・ミュルダールとともに1925年〜1935年に計画した居住プロジェクトがはじまりなんだそうです。

ポイントは多世代居住で、子育て中の家族、一人暮らし、大人だけの世帯、シニア世代などが世代をこえて共に暮らします。

シェアハウスとの違いはキッチンやトイレやバスルームなどはそれぞれの自室にあり、それ以外の場所が共有スペースになるので、シェアハウスと比べるとプライベートが適度に確保されている居住スタイルになっています。

多世代居住は人間関係の問題があったりするようですが、それ以上に孤独感が減ったり、悩みを相談できたり、そんな”あたたかみ”を感じることがコロナ以降また注目をされているようです。

 

 

とにかく様々な分野で、世代間の交流は大きなテーマになっています。

ただそれはそんなに難しいことではないと思います。すべてを理解することは同じ世代でもできないわけで、そうするとまずは身近な人から相手の気持ちをほんの少しだけでも想像してみる、知ろうとする、それだけでも充分ではないでしょうか。

そんな機会をちゃんとちゃんとの学校でもつくれたらなぁと思っています。

 

10代の頃は親や大人に反発したりしていた気がします、20代は社会人になると会社や上司に反発したり、30代は結婚生活に反発して、40代は若い世代と上の世代との板挟みに反発して、これからも懲りずにずっと反発していくんだと思います。

そして、それと同じくらいに共感できることが年齢と共に増えてきた気がします。親から口を酸っぱく言われ続けた言葉は、自分が親になるとその気持ちが痛いほどわかります。

唇と歯、頬骨と下あごの骨、これらは全て繋がっていて一つでも欠けると成り立たない、そんな切っても切れない関係を「唇歯輔車」(しんしほしゃ)と呼ぶようです。

長生きの時代には、そんな切っても切れない関係を大切にする想像力が試されている気がします。

 

 

 

 

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