『 アナザーラウンド 』

海は遠くから見ると美しい、だけど近くに行ってみるとゴミが浮かんでいて汚れている。けれども勇気をもって海に飛び込むと海の底で真珠を見つけることができる…

そんな言葉を結婚式でいただきました。

もうすぐ20年になりますがまだ真珠が見つからない。

ある人にその話をしたところ「海を間違えたんじゃない?」と言われ大笑いしました。

そしてもともと真珠なんていらないやと思っています。

 

子供の頃に虹の付け根の場所に行ったことがあります。

小さな山を登ると廃車になった錆びついたバスがあり、柵もない場所に牛がいて、虹が消える前にと急いでいると雨でぬかるんだ土に滑って靴が脱げて、まあ手やら足やらドロドロになりながら、なんとか虹の付け根の辺りにたどり着きました。

そこにはもちろん虹なんて何もなく、憶えているのは腐った木の匂いと、食べると危険だとアピールしているキノコと、ボールペンサイズのミミズでした。

アニメの一休さんみたいに虹を歩いてやろうと思っていたので相当に落ち込んでいたことを覚えています。

近くで見た芸能人の肌がボロボロだったり、憧れのサッカー選手の性格が悪かったり、近づけば近づくほど思っていることと現実は違っていることを思い知らされます。

そんなギャップを埋めていくうちに、夢を見なくなるのかもしれないと思います。

 

『 アナザーラウンド  』

今しかないと、居酒屋に行きました。

久しぶりの再会と久しぶりに飲む生ビールは格別でした。意味のない会話をし、グダグダと過ごしました、やっぱりこういう空間は少なくとも今の自分には必要だなぁとしみじみ思いました。

【人間の血中アルコール濃度は常に0.05%を保つのが理想】というノルウェー人哲学者の理論を証明するために、酒を飲みながら授業をする4人の高校教師。

そんなあり得ないような物語『アナザーラウンド』がアカデミー賞をはじめ世界中の映画賞を総なめにしています。ちなみに ”アナザーラウンド” とは「もう1杯」という意味なんだとか。

デンマーク出身のトマス・ヴィンターベアが監督を務めた映画「アナザーラウンド」は高校ではやる気のない授業に生徒や親からクレームがきたり、家庭では奥さんと会話もなく息子からもバカにされるという50代の歴史の教師が主人公です。

そんなさえない教師と同じように人生に嫌気がさした教師の友達3人が飲みながら、1人が見つけたある新聞記事の話題になります

【人間の血中アルコール濃度は常に0.05%を保つのが理想】

そしてこのあやしい記事を4人の教師が実践してしまうという、めちゃくちゃな内容ですが、ウォッカを飲んでから授業をすると嘘のように授業がうまくいき始めたり、家族との関係もうまくいき始めるという話なんだそうです。

なぜか上映館が少なすぎてまだ見れていません。ああ、見たいなぁ

 

『 としよりの日 』

「としよりの日」なんて聞くと今の時代では問題が出そうですが70年前は問題にならなかったようです。1947年に兵庫県多可郡野間谷村から始まったこの敬老行事は、その後全国に拡がりながら「老人の日」になり(これも問題なネーミング)、そして1966年に現在の国民の祝日「敬老の日」(これはぎりぎりセーフ)となり、毎年9月の第3月曜日がその日になります。

7月末に厚生労働省から発表された昨年の日本人の平均寿命は女性が87.74歳、男性が81.64歳で、いずれも過去最高を更新しました。男性は世界で2番目に長生きで、女性は世界で1番長生きになるようです。

2025年になると3人に1人が65歳以上になり、団塊の世代が75歳以上になるタイミングで医療や介護、また年金制度も限界を迎えるのではないかと危惧されている「2025年問題」まであと4年になりました。

そしてもうひとつの問題として2025年には「崖」があるといわれています。複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムをそのままにしていくと国際競争に負け、経済がさらに悪化し最大12兆円の経済損失が生じるかもしれない、そのシステムの問題を経産省のリポートでは「2025年の崖」と警告しています。

この2つの問題は関係ないようで密接に絡み合っている問題でもあるようです。

少子高齢化によるIT人材不足や、既存のシステムの全容を知る人材が定年退職や介護などの理由によりいなくなっていくのではないかと予測されています。

2025年問題はあらためて高齢者の問題ではなく、誰もが関わる問題だと思います。

 

『 問題意識 』

6年くらい前、友人3人の漠然とした問題意識からシニア支援の活動として始まったこの「ちゃんとちゃんとの学校」ですが、2025年問題に対してこんな自分達でもできることはないだろうかと、日頃シニアに関わることの多い有志の方々を中心に職種や年代も超えてお集まりいただき、もちろん本業に差し支えのない範囲でゆるくご協力いただきながら活動しています。

まず考えたのはシニアに関わる人たちが職種を超えて学び、意識をアップデートしていかないといけないということで定期的な勉強会をスクール形式でスタートしました。

また個人や1つの企業ではできないことも、同じような志を持った人たちで集まればできることもあるんじゃないかということで、グループというかコミュニティのようなものをつくり、そこからシニア層の方々の健康寿命を延ばすためにできるアイデアを集め、出来ることから始めました。

ちゃんとちゃんとの学校の立ち上げからいつも優しく見守っていただいている東京大学名誉教授の眞鍋昇先生にご協力いただいて健康寿命を延ばす「シニアの栄養学」の授業を東京大学で開催したり、山梨では鈴木学さんや加藤寛啓さんにご協力いただいて正しい歩き方を学ぶウォーキングイベントを開催したり、立ち上げ人の1人である三谷さんに協力いただきながら健康寿命を延ばすフードを開発し発売したり、同じような問題意識を持った方々と様々な活動をしてきました。

そんな活動を続けながら見えてきたことや感じたことは、始める前に想像していたものとは違ったものでした。

認知症に対する考え方や、介護に携わる方の意識の高さや情熱、またそれぞれの分野の方が行っているシニア支援の活動など、とにかくとても刺激にもなり勉強になりました。

そして一番強く感じたことは、暗いイメージが先行していた高齢化の問題ではなく「長生きにはもっと価値があるんじゃないか」ということでした。

歳をとるということはマイナスなことばかりではなくプラスのことも沢山あります。ただ生産性ばかりが重視される社会においてはどうしてもマイナスなことが注目されがちです。

儲かるか儲からないか、それは確かに大切です。綺麗事だけでは生きてはいけないこともわかります。ただ知らぬ間に人にも値札がくっついているような世の中は、そういう価値観ばかりで物を見る世の中はつまらないし、その価値が突然消えたらどうするんだろう、その人は価値がなくなるの?そう思うと恐ろしい考え方だとも思います。

大好きな女優の石田ゆり子さんが「お金って紙だから、経験に変えていきたい」と言われてました。その通りだなぁと思いますし、限られた時間の中では経験こそが大切なんだと思います。

何もなくなった時にこそその人の本当の価値があるはずです。

ちゃんとちゃんとの学校として色々と取り組んできましたが、その中でたどり着いた感のある「100歳図書館」は”長生きの価値”を世代を超えて多くの方々に伝えていくことができるプログラムだと思います。

 

『 終わりの始まり』

まだまだ小さいけれどこれからも大切にしたいちゃんとちゃんとの学校ですが、個人的なことを言うとちゃんとちゃんとの学校をやればやるほど落ち込んでいました。数えきれない失敗と、実際にやってみるほど思い知らされる現実とのギャップ、自分は何もできないなぁと…

でも今考えると、始めるときに思っていた場所とは違いますが、なんだかんだでたどり着いたこの場所が来たかった場所なんだと思います。

よく使われる言葉 ”終わりの始まり” じゃあないですが、宇宙にも終わりがあるみたいですから物事には必ず終わりがあります。始まった時点でどこかで終わることは決まっていて、このちゃんとちゃんとの学校もいつか終わりの日が来ます

つい先日、ちゃんとちゃんとの学校は過去最長のシーズン3を終えました。

これからの先のことはいつものように未定です。次やるとしたらシーズン4なのかもしれませんが、4はだいたい良くない気がします。

インディ・ジョーンズもあのトイストーリーだって4はつまらない。やっぱりシリーズものは3までが限界なんじゃないかと思ったりします。

次やるときは「シン・チャントチャントノガッコウ」になるのかな?まあそれはさておき、名前だけじゃなく今までとは違うカタチでできたらいいなぁと思っています。

やっぱりまだまだ足りない、アナザーラウンド。

 

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