『昔懐かしい「歌声喫茶」の再来』

夜な夜な皆が生演奏に合わせて歌う昭和の大衆文化「歌声喫茶」が、40年以上の時を経て、再びブームとなりつつあります。

■歌う列車「歌声列車」

とある日曜日の昼、千葉県市原市にある五井駅に停車中の小湊鉄道の先頭に、いつもと違うヘッドマークのついている列車が。ヘッドマークに書かれているのは「歌声列車」の文字。この列車、その名の通り列車に乗りながら歌を楽しむための列車なのです。

2009年から始まり、年に数回走ると言うこの歌声列車、60代以上のシニア層に大変人気の列車で、今年の12月には第48回を数えますが、毎回定員50名の席は予約開始後間もなくして売り切れるほど。

五井駅を出発した列車は、終点の上総中野駅で30分弱の休憩を挟んで、また五井駅へと戻ります。その車中約2時間半、昭和歌謡や童謡などを、アコーディオンの生伴奏に合わせて歌いまくります。小湊鉄道は、列車そのものが昭和の懐かしい雰囲気を演出してくれるので、参加者は皆若かりし頃に、まるでタイムスリップしたかのような気持ちになれます。

五井駅から夷隅郡大多喜町の上総中野駅までの39.1kmを結ぶ古き良き鉄道風景がいきる小湊鉄道の路線。春には桜や菜の花の絨毯を眺めることもでき、旧国鉄時代の懐かしいディーゼル車が今もなお現役で走っていて、18駅あるほとんどの駅は昭和初期の開業時からの木造の駅舎という、懐かしい風情を楽しめる列車です。

場所こそ違いますが、この歌声列車は皆が大声で歌を楽しむ様子が、まさに昭和の大衆文化「歌声喫茶」そのものではないでしょうか。

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Photo by soygcm

 

■歌を歌うことは脳の刺激に

シニアにとって大声で歌を歌うことは、声を出す刺激に加え、音楽の楽しさが脳に刺激を与え活性化します。特に昔懐かしい歌というのは、その歌にまつわる古い記憶や情景、情感などを呼び起こすことに繋がり、より強く脳を刺激してくれます。人間は最近の記憶よりも古い記憶の方が鮮明に覚えているものです。認知症の患者さんでも、歌だけは記憶していることも多いことから、音楽療法を治療の一環として取り入れているところも多いです。

こうした小湊鉄道で行われている「歌声列車」と同じような取組をしている鉄道は、他県にも多くあると聞きます。皆さんの住んでいる地域にも、ひょっとしたら歌を楽しめる企画があるかもしれません。是非見かけた時には一度参加してみてはいかがでしょうか。

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