『 通り道 』

小学生の頃、近所に大きなチャウチャウ犬がいました。

子供心にライオンみたいだなぁと思っていたそのチャウチャウは滅多に吠えない利口な犬でしたが、友達の家に行く途中にはチャウチャウのいる家があり、その道を通るしかなく、いつもビクビクしていました。

ある日母親が「あそこのチャウチャウが吠えたんやって、珍しいこともあるんやなぁっていうとったらな、近所に泥棒が入ってたみたいやで、やっぱりあの犬はえらいわぁ」と言ってたことがありました。

それからはチャウチャウの前を通るときには心の中まで見られているような気がして、最近やった悪いことがバレないように吠えられないようにしながら通っていました。

どこかに行きたいときには、必ず通らなければならない道があったりします。

 

今月はなんだかんだでずーっと大阪にいます。探していた本が売っていなくて、なんでもあるはずの梅田の紀伊國屋に行ったんですが見つからず、ここにないならしょうがないと違う本を買ってみたら面白くてあっという間に読み終えました。

ゲームのし過ぎで親指に起こる炎症を「Nintendinitis(任天堂炎症)」とアメリカで命名されていることや、昔の手術の恐ろしさなど、まあ危なっかしくて面白いのですが、その中に手術中にガーゼを患者の身体の中に置き忘れてしまうという話が書いてありました。

手術中には数十枚ものたくさんのガーゼを使うようで、ガーゼは水分や血液によって小さく縮んだり臓器や脂肪に隠れてしまったり、そうするとうっかり忘れてしまうことがよくあるんだそうです。

そんなわけで手術のときには手術室看護師さんという方がいて、ガーゼの置き忘れを防ぐためにガーゼの枚数を数えて記録する『ガーゼカウント』と呼ばれる業務まであるそうです。なるほど大切ですね。

ガーゼはあらい目で繊維を織り合わせた生地を指す広い意味の言葉で、語源は絹を表すアラビア語の「qazz」や生糸を表すペルシャ語の「kaz」からきており、そしてそれらの単語は絹の起源であるパレスチナのガザ(Gaza)に由来するんだそうです。

 

10月7日にパレスチナ武装勢力ハマスがイスラエルにテロ攻撃を行い、その後イスラエルがガザ地区に攻撃を始めています。さらに地上侵攻が始まるとハマスとは関係のないパレスチナの民間人が今まで以上に犠牲になる可能性が高く悲惨な状況です。本当にあっちもこっちも早く停戦になりますように。

 

10月10日は尊敬する眞鍋先生に機会をいただき、コロナもあったので久しぶりになりますが母校である大阪国際大学で講義をさせていただくことになりました。

まあ講義なんていえるものでは無いですが、今の仕事とこれまでのこと、そしてこれからのことをお話させていただきました。

今回で5回目になるのですが、毎回準備をして話をしても上手くいかず反省ばかりしています。ただ今回は自分の子供も大学生になったので自分の子供に伝えるつもりで準備をしました。

これからは日本の人口が減り、少子高齢化が今以上に加速します。多くの業種は人口の約3分の1をしめるシニア向けにすでに変わっていて、働き手が減り自動化も進んでいます。なくなる仕事もあれば今までなかった仕事も生まれ、人にしかできない仕事がより重要視されることになりそうです。

また眞鍋先生から日本で介護の仕事をしていた人が、カナダのバンクーバーで働き始めたという話を聞きました。

日本人ならではの丁寧さや優しさが評価されているようで、給料は日本の5倍なんだそうです。これからは野球みたいに日本で基礎を学んでメジャーで活躍する人も介護では増えるのかもしれません。

一方では高齢化が進む社会では病気や要介護が増えます、また年金などを含めた社会保障費も上がり続けるという課題があります。そんな中で求められていることが健康寿命をのばすことです。これはどの世代にとっても無関係ではないので、これから社会に出て行く学生さんにもお話をさせていただきました。

今までの病気になってから治療するという時代から、病気になる前にならないようにしていくことがより必要な時代になります。従来の医療は必要不可欠ですが、それだけではなく運動や休養はもちろん、栄養を学んだりサプリメントも欠かせない時代になると思います。

ただ健康的な食事以外は信じられなくなるオルトレキシアと呼ばれるような摂食障害など偏った考え方などがあったりする時代でもありますから、なるべく偏りのない情報を、また年代や個人によって変わってくる必要な栄養や運動などの情報をシニア層の方々にわかりやすく伝えていくことも大切だと思います。

そして『ちゃんとちゃんとの学校』の活動についても学生さんたちにも聞いていただきました。

人生最高の1枚の写真を選び対話する100歳図書館を紹介して長生きすることの新たな価値を考えていただきました。

学生さんからは「自分の人生を振り返ったり、写真を撮った時のことを思い出したり、誰かに話をしたりすることが認知症の予防や高齢者の孤独を防ぎ、社会へのつながりを保つという意味を持っている点が素晴らしい、自分より何倍も生きている人がどんな写真を選ぶのか気になった」とありがたい意見もいただくことができました。

また健康寿命をのばすための歩き方を学ぶウォーキングイベントの話もさせていただきました。ちなみにウォーキングイベントのリーダーの加藤さんはこの日のためにわざわざ山梨から車で、しかも下道で駆けつけていただきました。加藤さんありがとうございました。

 

そして最後にえらそうなことを言わせていただきました。

僕の子供は、やりたいことがないとか、好きなことが分からないとよく言っています。僕はそれでいいじゃないかと思います。僕もそうだったからです。

計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)は、心理学者のジョン・D・クランボルツ教授によって1999年に発表されたキャリア理論で、個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決まる、それをより良いものにしていこうと計画するというものです。

最初から目標がありそれを目指す人生は素晴らしいですが、そう出来ない人もたくさんいます。

変化が激しい予測不能な時代にはもしかしたらこちらのほうが適しているのかもしれませんが、生きていると何事も当初の予定通りにはならないわけです。

人は毎日決断しています。人生を左右するような決断もあれば、立つか座るか、コーヒーにするか紅茶にするか、そんなことも含めると、人は1日で35,000回も決断しているようです(ケンブリッジ大学Barbara Sahakian教授の研究)。

何も考えていないように見えても、人は無意識に自分の生きたいように生きていく決断をしているわけで、そのためには自分に正直でいることが大切です。

いまは成功したい人より失敗したくない人が多い時代です。たくさんの情報があればあるだけ失敗しないマニュアルみたいなものがあり、うまく生きていくことを教えてくれる人や情報が掃いて捨てるほどあります。そんな人のマネをしても、その先にあるのは自分の行きたかった場所ではありません。

自分で選んだ道はそのときは失敗したと思っていても、後になってみるとその道を通らなければ辿り着けなかった道だと分かったりすることがあります、あとから失敗は必要だったと分かります。

やりたいことを急いで探すことより、何かを決断するときには自分に嘘をつかないことが大切なんじゃないでしょうか。

なんて、悩んでいる自分の子供に伝えたいことを学生さんに伝えてしまいました。よく分からない人の話を一生懸命に聞いていただいた学生さんには感謝の気持ちしかありません。

最後のわけのわからない話はおいといて、健康寿命をのばすことの授業は、もっと若い世代から考えていかないといけないことなんだと、強く感じました。

ちゃんとちゃんとの学校もゆっくりのんびりと歩き始めようと思っています。

んな道を歩いたっていいじゃないか

 

 

 

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