『60の手習い』

「寿司の握り方を教えて下さい」

そう言ってこられたのは、会社を早期定年退職されたばかりで、間もなく還暦を迎えられる男性、大木さん(仮名)です。

私が大木さんと知り合ったのは今から7年程前でした。その当時から、「定年後は東京を離れゆっくりと暮らしたい」とおっしゃっていて、数年前には海の側にある温泉が有名な町にマンションを購入されました。今年に入って、ようやくその夢が叶うと喜ばれていた大木さん。

そんな大木さんが、私の主人(料理人)に言ってこられた言葉が、冒頭に書いた「寿司の握り方を教えて下さい」でした。

どうやら、お正月に子供たちが来たときに、ご自身で作ったお寿司をふるまいたいようです。せっかく海の側に住んで、魚が美味しいだろうに、全く魚料理が出来ないのではもったいない、ともおっしゃっていました。

かくして急遽一週間だけの、大木さんのための料理教室が開催されることとなりました。

たった一週間とはいえ、その内容は結構本格的です。まずは魚のおろしかたからです。もともと自炊をする機会も多いと言っていた大木さん。最初こそ緊張して包丁がうまく使えなかったものの、すぐに慣れてくるとあっと言う間に魚のおろし方をマスターされたようです。

次いで、酢飯のきり方や、穴子の煮方、巻物、握りと、順を追って練習は続き、その日覚えた事を家でもしっかりと復讐してくる熱心さによって、たったの一週間で、しっかりと握り寿司までもマスターされていました。

 

初めて挑戦した握りと巻物
初めて挑戦した握りと巻物
家でもちゃんと復習されてました
家でもちゃんと復習されてました
最終日の総仕上げ
最終日の総仕上げ

 

「60の手習い」という言葉がありますが、何かを覚える、何かを習うということに、年齢は関係ありません。今回の大木さんのように、「やりたい!」という気持ちさえあれば、何だって習うことも覚えることもできるのです。

60歳、まだまだシニアと呼ぶには若すぎる年齢です。皆様も何か楽しめる趣味や目標を見つけられてみてはいかがでしょうか。

『終活を考える』

最近、「○活」という言葉をよく聞くようになりましたね。
「就活」「婚活」「恋活」「妊活」、そして最近話題の「終活」

「終活」は、ここ数年テレビなどでも取り上げられていることもあり、多くの人たちが知るところとなりました。最近だと、「渡る世間は鬼ばかり」など様々な脚本を手がけた、橋田壽賀子さん(91歳)が終活をして話題となりました。

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Photo by jill111

■終活とは?

終活とは「残りの人生をよりよく生きるため、葬儀や墓、遺言や遺産相続などを元気なうちに準備すること」という意味で、この言葉は週刊誌が作った造語です。

以前から遺言書の作成などは行う人もいましたが、広く一般的には浸透していなかったように感じます。しかしこの終活という言葉が出来てからは、多くのシニア達が関心を持ち、実際に様々な準備を始める人が増えているそうです。

終活が人気となってきた背景には、この言葉の親しみやすさと、昔と違い子供が少なくなっている今、子供に負担や迷惑をかけたくないと考えるシニアが増えてきているなどの理由があるからではないでしょうか。

これまで「死」に対する準備や言葉というのは、縁起が悪いと思われがちでしたが、準備をしていなかったばっかりに、遺された家族が途方に暮れてしまうケースもあるとすれば、終活は決して縁起の悪いことではないのではないでしょうか。

 

私の父も、昨年この終活を行った一人でもあります。
昨年、癌を患った父は、大きな手術をする事となりました。手術の成功率は高いものではありましたが、「絶対大丈夫」という保証もありません。

そこで父は、手術までの間に色々な準備を短期間で行いました。まず取り掛かったのは、部屋の掃除でした。自分が命を落とした場合には、実家のこの部屋に運び込んで欲しいということでした。

次に、お墓の開眼供養です。数年前に既に墓地を自ら購入し、自分の気に入った墓石まで建ててはありましたので、開眼供養のみお願いしました。さらにこの時、戒名も付けていただきました。

あとは、連絡してほしい親戚や知り合いの連絡先一覧の作成、私たち子供への遺産相続の大まかな計算など、ありとあらゆる準備をしていました。

結果としては、手術は成功し今も元気に生活できていますので、その準備は準備だけで終わることとなったわけですが。
しかし、こうした準備をしてくれた事で、私たち子供側は、何をすればいいのかなどわかりやすく、大変有難いなと思いました。そして、その準備をした父本人も、この先何が大切であるか、何をすべきかなど、逆に残りの人生を有意義なものにしようと考える切っ掛けになったようです。

もちろん、必ずしも終活をしなければならないということはありませんし、終活をしないことが悪いということはありません。しかし、終活をすることで、快適なシニアライフを送れる切っ掛けが見つかる場合もあります。まずは、身の回りの不用品を片付けるなど、小さなことから始めてみるのも悪くないかもしれませんね。

『丈夫な歯が健康を作る』

先日お会いしたシニア女性、長谷部さんのお話です。長谷部さん、年齢は90歳になられます。90歳とは思えない程お元気で、なんと未だに現役で家政婦の仕事をこなしているそうです。

家政婦の仕事は結構な重労働でもあります。どうするとそんなに健康で若々しさを保てるのか、毎度のことながら長谷部さんにも恒例の質問をしてみることに。

「健康の秘訣は何ですか?」

すると、驚きの答えが返ってきました。

「歯が丈夫だからだと思うのよね」

なんと長谷部さん、90歳でいながらにして、治療箇所はあるものの全て歯は自前だそうなんです!昨年度は「いい歯の日(11月8日)」に表彰もされたそうです。

※いい歯の日表彰:80歳以上になっても自分の歯を20本以上保てている健康な人を表彰

「歯が丈夫だから、固いものでも何でも食べられるの。それが元気の秘訣だと思うのよ。」と長谷部さんはおっしゃっていました。

歯が丈夫だと健康が保てるという話を確かに聞いたことがあります。今回長谷部さんのお話を伺って、改めて歯は健康と大きく関係あるのだなと実感しました。

そこで今回は「歯」と「健康」についてを簡単にご紹介させていただきます。

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Photo by  David Salafia

 

■歯と脳と足の関係

加齢とともに弱る足腰、そして脳の衰え。こうした足腰や脳の機能を保つためには、歯を丈夫にすることが大切です。歯を丈夫に保てないと、認知症のリスクは1.9倍、転倒リスクは2.5倍高くなるというデータが出ています。

物を噛むという行為は、同時に脳を刺激することがわかっています。噛んだ時の刺激は歯根にある歯根膜から脳に伝わり、その刺激は脳にある、運動・記憶・思考・感覚・意欲などを司っている部分の活性化に繋がるからです。歯がなくなると、噛めなくなるだけでなく、歯根膜もなくなってしまうので、脳への刺激が伝わらなくなるので、認知症リスクが高くなると言われています。

また、歯が残っていないと下顎がずれて前身のバランスが崩れることから、歩く速度が遅くなったり、歩くこと自体が少なくなり筋肉量がしだいに減少してしてしまうと言われています。

歯を健康に保つためには、咀嚼回数が重要です。何度も噛むことによって、唾液がしっかりと分泌され歯を守ってくれます。

子供の頃に「よく噛んで食べなさい」と言われた事はありませんか?これは、食べ過ぎ予防や消化に関する理由だけでなく、虫歯の予防や脳や運動能力の発達にも関係していたのです。

皆様も今ある歯を大切にするためにしっかり噛んで、認知症や足腰の衰えを防止できるよう心掛けてみてはいかがですか?