『 重 』

真夜中のリンゴ畑、その傍らにある小屋に人目を忍んで入る1人の女性、あらかじめ傷ついたり寒くならないようにと柔らかい生地なんかを敷き詰めて準備していたその小屋で、たった独りで出産した。

 

その当時は戦争中で  ”産めよ殖やせよ” の時代だったから「とにかく産め、もし子供が健康に産まれなかったら、その場で殺せばいい」と言われていたらしいの、病弱だった母親は自分の子供がどんな状態であろうが殺されたくないから隠れて産んだんだって、それからへその緒を自分で切って産まれたばかりの私を抱きかかえて戻ってきたみたい。

物心ついたころに「あなたはその辺で拾ったから “ひろこ” って名付けたのよ」と教えられ、実の子供じゃないのに、まぁ良くしてくれて有り難いって、子供ながらに思ってねぇ、感謝していたんだよね。それから17か18になってから、私が実の子供だったのがわかったのよ、そりゃあ嬉しかったよ。

ちょっと前までKIOSKの売店で働いていたひろこさんは楽しそうにNetflixが映画化しそうな話をしてくれました。

歴史の教科書には、その時代ごとの大きな出来事や歴史に名を残す偉人達は載っていますが、ひろこさんのお母さんは載っていません、歴史には残らない名もなき偉人はきっとたくさんいます。

先日久しぶりに幸田さんと会って、ぐだぐだとよく分からない話をしました。そのときにこの話をしたら、僕の周りにも大人になるまで自分は実の子じゃないと思っていた人がいましたよと言っていました。

その人はそれがとても辛くて自分の居場所を探すような日々を過ごしていたようです、それから真実が分かったときには嬉しくて、少しでも人のためになるような活動をされていらっしゃるようです。

その時代にはもしかしたらそんなに珍しいことではなかったのかもしれません。情報に溢れた時代ですが、やっぱり私たちは知らないことが多いし、分かったつもりでいることはさらに多い気がします。

 

『 コンプレックス 』

コンプレックスと言えば、僕なら吉川晃司と布袋寅泰が出てきますが、意味は複合体とか複雑とかそんな意味なので、反対の言葉はシンプルです。

アカウントが必要です、IDだパスワードだ、認証コードだ、何かをしようとすると入力を求められます。また毎日のように詐欺メールが届き、電化製品の問い合わせをしても、機械音声にたらい回しにされたあとオペレーターが出るまでずっと待たされる。世の中は本当に便利になったのかなと思うほど、高齢者の方じゃなくても複雑です。

そんな中、今や生活必需品となったスマートフォンの使い方などをシニア世代の方々に分かりやすく伝えているのが村岡さんです。

ちゃんとちゃんとにもずっと協力してくれている村岡さんですが、シニア層の顧客が多い会社で働いていて、最初は顧客にハガキでお知らせを送っていたものをLINEで送るようにできないかと取り組んでいる最中に、高齢者の方々がどういう場面で苦労されているかを実感することが多かったみたいです。

それから村岡さんは独学であらゆるメーカーのスマホの使い方を勉強して、ご高齢の方でも分かるようにゆっくりと丁寧に説明したり、また楽しみ方も知ってもらおうとインスタなどのSNSの使い方も教えている伝道師的な存在感です。

そんな村岡さんから、ちゃんとちゃんとでご高齢の方向けのショート動画をYouTubeでつくりたいと、ありがたい言葉をいただきました。

それはスマホの使い方はもちろんのこと、電子マネーを使った買い物や、電車の乗り方、ネットショッピングやら、日常生活に寄り添ったものを考えていただいているみたいです。これはたくさんあると素晴らしいなぁと今からワクワクしています。

 

『 長生きの時代 』

政府は13日、新たな「高齢社会対策大綱」を決定しました。

社会を持続可能なものにしていくため、75歳以上で医療費を3割自己負担する対象者を広げることを検討するという内容や、65歳以上の人が一定の収入を得ると年金が減額される「在職老齢年金」、また高齢者がより長く働けるようにとリスキリング(学び直し)の充実、定年延長などを取り入れる企業の支援し、60代の就業率を5年後に現状より5%増やすことを目標に掲げました。

また話は変わって、老化細胞を除去する技術の開発に取り組んでいる東京大医科学研究所の中西真教授(分子腫瘍学)はある酵素が老化細胞を生き延びさせていることを突き止め、酵素の働きを妨げる薬を使ったマウス実験では、筋力の回復や臓器の機能改善といった「若返り」効果を確認し、今後は人への応用を目指しているようです。

中西教授によると「2050年頃には100歳まで働き、120歳まで余生を楽しめる世の中になっている可能性がある」と言われているようです。長生きするのにもなにかと大変な時代です。

 

100歳図書館はやりたいけど、大変だからもっと気軽にできないかなぁ」と私が言うと、それだと意味がないんです。と幸田さんに言われました。

そうだよね、と内心思いながらもついつい楽をしたがる怠け者の私に100歳図書館の価値をまた話してくれました。その中で「100歳図書館はインフラにしたいんです」と言う言葉がでてきました。

 

それは今から5年前くらいに同じことを言われてポカンとしている私に、「ええとインフラというのはですね、、、」と幸田さんがわざわざインフラの説明をしてくれたことを思い出しました。

ポカンとしたのはそういう意味では無かったのですが、幸田さんはあれからもずっとそう思っていたみたいで、なんだかいいなぁと嬉しくなりました。

どういうかたちになるかは分からないですが、価値のあるものを、インフラみたいになくてはならないものをつくりたいものです。

 

最近はプライベートも仕事も色々なことがおこり、やっぱり色々なことが起こる時というのは重なるものなんだなぁと、痛感しています。

重なるついでに、今日は敬老の日でコーヒー好きな母の誕生日です。高齢の母には良さげなコーヒーミルを送りました。

歴史に名を残すような偉大な人も、有名でなくても偉大な人も、みんなをリスペクトする日だと思います。

コーヒーの花言葉は「一緒に休みましょう」です。今日くらいはゆっくりしてください。

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