銃殺刑か絞首刑かを死刑囚が選ぶことができるユタ州で銃殺刑を選んだ死刑囚ゲイリー・ギルモアは、世界的に死刑廃止の風潮が高まりをみせる中「死刑にされる権利」を主張しました。
死刑執行人に「言い残すことはあるか?」と訊かれたギルモアは「Let’s do it」(さっさと始めようぜ)と答えたといいます。
この「Let’s do it」が世界的なスポーツメーカーNIKEのスローガン「just do it」が生まれたキッカケなんだそうです。
『 立たない勇気 』
2018年「just do it」の30周年を記念する広告に起用された選手はマイケル・ジョーダンではなくコリン・キャパニックというアメリカンフットボールの選手でした。
サンフランシスコ49ersのクォーターバックとして活躍した選手ですが、話題になったのは2016年に行われた試合での国歌斉唱の時、1人だけ片膝をついたまま立ち上がりませんでした。
「黒人や有色人種への差別がまかり通る国に敬意は払えない」という抗議でした。
この行為には賛否両論あり、その翌年からキャパニックはフリーエージェントになり、人権運動の影響もあったからなのかチームとの契約は結ぶことができませんでした。
そんな中にも関わらずNIKEはコリン・キャパニックを「just do it」30周年の広告に起用しました。
これをよく思わない者の中にはNIKEの帽子やシューズを切り刻んだり燃やしたり、不買運動が出たりもしました。
企業やブランドは顧客離れを恐れて政治的な立場を明確にはしませんが ナイキは明確にしました。
コリン・キャパニックの広告にはこう書かれています。
「何かを信じろ。たとえそれがすべてを犠牲にすることを意味しても。」
『 性別なんて 』
53年前の1967年、キャサリン・スウィッツァーは当時女性の参加が認められていなかったボストンマラソンに、性別を悟られないように参加し、レース途中には競技役員からの妨害にあいながらも4時間20分で完走しました。
キャサリン・スウィッツァーは女性として初めて正式に参加、完走した選手になりました。
当時マラソンは男性の競技で女性には無理だと考えられていたようです。それからも女性がマラソンに参加できるように古い固定概念と戦い続け、いまは当たり前のように女性のマラソンがあるのは彼女のおかげだと言われています。
2017年、70歳になったキャサリン・スウィッツァーは再びボストンマラソンに参加して完走しました、タイムは4時間44分31秒。
『 見て見ぬ振り 』
コロナのニュースで埋め尽くされた中、アメリカのミネアポリスで警察官が黒人男性ジョージ・フロイドさんの首を膝で押さえつけ死亡させた動画が報道され、アメリカの人種差別に関わる人権問題や警察のあり方などに対する抗議やデモが世界中に広がりをみせています。
“見て見ぬふり”という言葉がありますが、何を言っても叩かれるような時代ですが、かといって何も言わないのは暗に差別を肯定していることになるのかもしれません。
もし何も言わなかったら、もし何もしなかったら、ということの積み重ねで未来ができているとしたら、もしコリン・キャパニックが片膝を立てなかったら、もしキャサリン・スウィッツァーが走らなかったら、今は違っていたかも知れません。
高齢者支援プロジェクトを初めてから分かったことの中にはエイジズム (年齢差別)や認知症の方への偏見です。
知らないことが偏見をつくることはもちろんそうですが、もう少し踏み込むと知ろうとしない”無関心”こそがその根本的な問題なのかも知れません。
「それでも夜は明ける」という人種差別を題材にした映画がありましたが、知れば知るほど人種差別だけにとどまらず様々な偏見や固定概念があふれていることに気づきます。
どんな歪な世界でも夜は明けますが、それを少しでも変えるようなことをちゃんとちゃんとの学校でもやれるのではないかと思っています。
そのためには多くのことを学び知ることや、それを勇気をもってやっていく「just do it」が大切なんじゃないのかなと思います。まじめか!と言われてしまいますがおおまじめです。