『 100歳図書館@倉敷 』

人生は重い。小説や映画だと太刀打ちできないかもしれない、その空間にいないと分からない、肌感覚で伝わってくる凄みがありました。

9月14日、岡山県の倉敷市で行われた初めての『100歳図書館』は、私達が想像したものを遥かに超えていきました。

 

『 100歳図書館 』

ちゃんとちゃんとの学校を始める前から、幸田さんとやりたかった企画が『100歳図書館』です。

人は誰もが、その人にしかない人生の物語があります。ただ自分の人生を語る場所や機会は限られた人にしか与えられないのではないでしょうか?

気心の知れた友人や、家族であってもあらためて自分の人生を語るなんていうと、かえって難しいと思います。

 

そこでそういう場所や時間がつくれたら素晴らしいんじゃないかと、それは今までは価値がないと思われていたかもしれない人生のストーリーを、誰もがわかるような価値として表現出来るかも知れない、また普通に生活していると交わることがない見ず知らずの人の人生が、世代を超えて誰かの生きるエネルギーになるかも知れない、と思っていたからです。

ただ何もないと話をするのは難しいですから、そこで自分の人生最高の1枚の写真を使いながら、自分の人生を一冊の本を読むように語るという、デンマークで始まったヒューマンライブラリーの要素を取り入れながら作っていく、シニア世代の人生の図書館が『百歳図書館』という企画です。

 

『 わたしものがたり 』

今回は「100歳図書館 @ 倉敷 /
わたしものがたり 〜写真で語ろう!地域と私の物語〜」というタイトルのもと、古民家再生を軸にしながら地域包括ケアシステムの新たな形として地域福祉やコミュニティづくりに取り組んでいらっしゃる「NPO法人 つくぼ片山家プロジェクト 」様の主催で開催されました。

地域にお住まいの有志8名の方に人生を語っていただく”ストーリーテラー”として「人生の大切な1枚の写真」をもとに、人生の豊かさを語り合う「対話の授業」として行うことになりました。

今回初めて開催されるにあたり、どのような写真を選び、どんなことを伝えていただくのか、開催当日までにつくぼ片山家の方々にご協力いただき、ストーリーテラーの方々と一緒に写真の選定までしっかりと準備をしていただきました。

またどうしても話が止まらなくなってしまうことがあったり、若い世代の方には分からない言葉や表現があったりするとうまく伝わらないこともありますから、今回はお話するストーリーテラーの方々にはそれぞれに優秀な担当者の方についていただき、よりスムーズに進行出来るようにサポートしていただきました。

そして、2歳から80代の方まで参加された100歳図書館が始まりました。

 

『 新しい価値 』

3つのグループに分かれて、参加者の方々がストーリーテラーの方を囲むように座り、それぞれの担当者の方に導かれながら、ストーリーテラーの人生の物語がいよいよスタートしました。

ストーリーテラーの方が写真を見せながら話を始めます、自己紹介をしたときとは明らかに顔の表情が変わり始めます。

時代がタイムスリップしてその時代にいくような気分になるからなのか、いつもの忙しない時間とは真逆の、静かでまるで時間が止まったような不思議な時間が始まりました。

そしてひと段落すると、参加者の方が質問をしていきます。ついさっきまでは顔も名前も知らないもの同士が、もしかしたら家族や恋人にも話さない内容を話していたりしますから、これは不思議でした。そして何か深い場所で通じているようでもありました。

ある方はご両親のことを語り、ある方は学生時代は本が好きで図書館の本を読み尽くした話、ご主人との出会いなど、まあたくさんの色々な話が出てきます。

これは文章にすると伝わらない、その場所にいなければ分からない感覚がそこにはありました。

 

なぜ、知らない人の人生の話がこんなに重く心に響くのか?

 

 

『 モノローグとダイアローグ 』

ストーリーテラーの方々には、最後に参加者の方がメッセージカードを贈りました。

まだまだ話し足りない、まだまだ聞きたいというなか、無事終了しました。

 

最後につくぼ片山家の理事で茶屋町在宅診療所の亀山先生から今回の試みの可能性についてお話がありました。 

いま医療の分野でも注目されていることが、ダイアローグなんだそうです。

『ダイアローグ』dialogとは英語で(対話)という意味で使われるようで、その反対の言葉が『モノローグ』monolougeとは語源がラテン語のmono(ひとつ)とlouge(話)を組み合わせた言葉で「独り言」という意味があるようです。

『ダイアローグ』「対話」が精神疾患の薬を減らしたり、病状が良い方向に向かったり、また子どもの様々な問題や、子どもをもつ親御さんの問題など、世代を超えて多くの問題を解決してくれる効果があるのではないかと期待されているようです。

そして今回の試みが生み出す「対話」が世代間のギャップを超え、地域を元気にする可能性があるのではないかとお話していただきました。

 

今回の100歳図書館は、人生を語るストーリーテラーの方だけではなく、参加者の方もその人生の一場面に触れたとたんに昔を思い出したり、何故だか涙ぐんだり、やる気がみなぎったり、生きる喜びみたいなものを感じたりします。

 

正直、そんな素晴らしいものがこんな身近にあったんだという驚きがそこにありました。

始まる前に幸田さんが海外旅行に行くより価値があると言っていたものが、終わってみればすぐそこにありました。 

 

ちゃんとちゃんとの学校では、こんなに素晴らしい『100歳図書館』を、もっと魅力的に磨いていく予定です。

そして日本全国で『100歳図書館』をヴィンテージな移動図書館として開催できたらと考えています。

そして12月15日の東京大学でも皆さまに進化した形を披露する予定です、是非楽しみにお待ちください。

 

今日は、今年の敬老の日は偶然にも母親の誕生日でした。少し怖い気もしますが母親の100歳図書館も、隠れて聞いてみたいと思いはじめました。

 

『 ありがとうございます 』

最後に、当日の運営、事前の打ち合わせや、準備から何から何まで多大なるご協力をいただいた「NPO法人 つくぼ片山家プロジェクト 」の皆さま。

ストーリーテラーの方が話しやすい環境をつくっていただいた進行役の皆さま、わざわざ愛媛から来てくれたちゃんとちゃんとのお2人、そして何より、8人の素晴らしいストーリーテラーの皆様のおかげで、素晴らしい第一回目の100歳図書館となりました。

本当に本当に、ありがとうございました。

 

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