『 きっかけ 』

ひょんなきっかけで、ちゃんとちゃんとの学校が出来て、ひょんなきっかけで、今まで文章など書いたことがないのに、このコラムも書いています。

 

「きっかけ」という言葉は漢字で書くと「切っ掛け」と書くようです。
「切る」と「掛ける」を足した言葉だと言われています。

「きる」とは、”〜をやりきる”のような動作の終わりのことで、「かける」は、”〜かける”のように動作の始まりをあらわしていて、物事の終わりと始まりのことなんだそうです。

きっかけの語源も諸説ありで、他には歌舞伎役者が見得を切る(切る)ことが、場面転換の合図になっていて、その合図を見た裏方さんが走り始める(駆ける)、つまり「切る」と「駆ける」からきているという話もあるようです。

とにかく「きっかけ」とは、単に始まっただけではく、何かが終わり、そして新たに始まるということになります。

 

『 don’t look back in anger 』

12日、サッカーのイングランドプレミアリーグで、ほんの僅か1ポイントの差でマンチェスターシティがリーグ制覇しました。

2年連続の優勝を果たしたロッカールームには、シティの熱烈なファンで、マンチェスター出身の世界的人気バンド『Oasis』のノエル・ギャラガーが駆けつけ、選手たちとともに大熱唱したそうです。

マンチェスターと言えば、2017年5月22日アリアナ・グランデのコンサート会場で自爆テロが起こりました。子供を含む22人の死者、負傷者59人を出す大惨事でした。

翌月にはロンドンで再びテロが起こり、恐怖と不安と、ぶつけようのない悲しみと怒りが渦巻く中、テロで亡くなった方々に追悼集会が開催されました。その追悼集会である1人の女性が歌い始めた歌が「don’t look back in  anger 」、Oasisの歌でした。

静まり返る追悼集会で、たった1人で歌い始めた女性に、徐々に周りの人達も共に歌い始め、それは大合唱になります。

テロで心に大きな傷を負った市民から自然発生的に出てきた「 don’t look back in  anger 」はその後、サッカーのスタジアムの観衆や、他のアーティストにも新たな意味を持つ歌として歌われるようになり、行き場のない怒りや悲しみに対する歌として、またそこから立ち直る歌として歌われるようになりました。

 

そういえば、社会人になった頃に、えらいよく聴いていた曲でした。

 

 

『 きっかけ 』

回りくどい書き方をしてきましたが、初めて社会人になってから20年近くお世話になり、心から尊敬できる数少ない人が、先日亡くなられました。58歳でした。

このコラムで書くべきなのか、正直わからないまま書いています。ただこのプロジェクトを始めるきっかけにも関わる人だったので書かせていただいています。

 

その人はとても不思議な人で、経営者というより詩人みたいな人でした。

その人の話は、宇宙やら原始人やら、ぶっとんでいますが、その話はどこか魅力的で、色々な人や立場や様々な壁を乗り越える共感性があり、社会人になりたてで、いつも(今もですが)物事を斜めに見る私の心にも何故かすんなりと入ってきて、いつのまにか働く楽しさを教えてくれました。

誰かに喜んでもらえることをやりなさいと、人に感動してもらえるようなことをやりなさい、同じことを色々な例え話をして教えてくれました。

会社に入ったばかりの私の話を、安い居酒屋で一生懸命に聞いてくれて、自信がなくてもチャレンジするように励ましてくれ、大きなミスに対しても「風呂に入ってゆっくり寝たらいい」と言ってくれたのも覚えています。

その人に教えられた考え方に少なからず影響を受け、少しでも人に喜んでもらえる仕事をしたいと思い、私なりにたどり着いたともいえる部分があるこのプロジェクトには、色々なきっかけを感じます。

プロジェクトを始める前に、幸田さんともその方に相談に行きました。それ以降もプロジェクトを陰ながら見守っていただいて、昨年末の東京大学でのイベントにも来ていただきたかったのですが、どうしても体調が悪くて来ていただけなかったことがありました。

人生には必ず終わりがあるのはわかっていながら、あまりにも早く、あまりにも急で、その方と初めて会った頃に、社会人になりたての頃によく聴いていた曲を、訃報を聞いてから何回も何回も聴いていました。

 

きっかけは終わりでもあり始まりでもあります。昨日お別れとちゃんとちゃんとを頑張る約束をしてきました。

 

たくさんのプレゼントと、たくさんの宿題を私達に残して、旅立たれたその方のご冥福をお祈りします。

 

合掌。

 

 

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