『 御調町 』

20代の後半に会社を辞めて、川崎の溝口にあるクノールのカップスープ工場で夜勤のアルバイトをしていた時期があります。

半分眠りながら乾燥した春雨をロボットみたいにカップに入れていく作業を朝まで続け、へとへとになりながら翌朝には就職活動をしていました。その頃の数少ない楽しみがラーメン巡りでした。

 

『 ラーメン 』

無職は、時間だけは沢山あるので行列のできるラーメン屋さんにはよく並びました。ラーメンの好みは年齢とともに変わったり、転職してからは全国に出張する機会も増えるとその土地土地で出会った美味しいラーメンもあります。もちろん北海道も京都も博多も美味しいですが、おすすめのラーメンのひとつが尾道ラーメンです。

濃い醤油色のスープは魚介と鶏ガラなどが合わさった深い味わいがあり、豚の背脂のミンチが浮かんでいます、麺はストレートで少し細い麺ですが、全体的に奇をてらってなくバランスがよく、昔懐かしい醤油ラーメンにも通じる味でもあります。その尾道ラーメンがある広島県の尾道市は、岡山市と広島市のちょうど間くらいにある瀬戸内の海と山の合わさる美しい街です。

 

『 御調町 』

尾道市から車で北に30分走ったところに御調町(みつぎちょう)という町があります。御調町は2005年3月28日に市町村合併により尾道市に編入された町で、古くは石見銀山の銀を、尾道まで運ぶ銀山街道の宿場町として栄えました。この御調町が超高齢社会のいま、テレビや新聞でもよく話題になる『地域包括ケアシステム』発祥の地です。

 

『 地域包括ケアシステム 』

“2025年を目途に、高齢者になっても住み慣れた地域で、自立した生活を最後まで送ることができるように、必要な医療、介護、福祉サービスなどを一体的に提供し、すべての世代で支え・支えられるまちづくりをすること”

そのためのしくみを『地域包括ケアシステム』と呼んでいるわけですが、その形は地域によって異なります。それぞれの地域にあった『地域包括ケアシステム』の構築が必要で、その中で住み慣れた地域で助け合いながら生活していくシステムづくりが求められています。そのシステムをつくることが全国各地で、来る2025年に向けて進められています。

 

『 寝たきりゼロ運動 』


この『地域包括ケアシステム』は今から40年以上も前の、1974年頃から御調町にある広島県公立みつぎ総合病院の、ある取り組みから始まりました。

【病院を退院してから寝たきりになってしまう患者が多い】その事実に対して、何か出来ないだろうか?

というところから、訪問看護、訪問リハビリなどの在宅ケアを医療と福祉が連携して「寝たきりゼロ運動」を行っていくという画期的な取り組みが始まりました。これが後に『地域包括ケアシステム』と呼ばれるようになりました。

介護保険制度が始まったり、介護や福祉の連携にプラスして医療サービスと介護サービス、生活支援なども含めて、より大きくその形を変えながら、また試行錯誤しながら『地域包括ケアシステム』が今ここにあるわけです。

 

 

 『 システム 』

4-2-3-1、4-4-2、4-3-3、、足して10になるこの数字の組み合わせはサッカーのシステムの名前です。

ゴールキーパーを除く全ての選手の配置を数字にしています。今の日本代表は4-2-3-1を使うことが多いので4人のディフェンダーと2人のボランチ、3人にミッドフィルダーと1人のフォワードみたいな感じです。

 

『 システムは重要ではない 』

世界一のサッカーの監督と言えば、プレミアリーグのマンチェスターシティを率いるジョゼップ・グアルディオラではないでしょうか?

歴史上1番強かったチームは?とサッカー好きに聞くとグアルディオラが率いていた頃のFCバルセロナだとよく言われますが、その後他のチームでもタイトルを取り続け、また常に新しいシステムを作り出す戦術のスペシャリストでもあるグアルディオラが、よく口にする言葉が「システムは重要ではない」という言葉です。

 

数秒単位で状況がコロコロと変わるサッカーでは、システム通りに選手が並んでいる瞬間はキックオフの時だけです。あとは常に動いています、つまり止まっている時間は無いわけです。

そして、その瞬間ごとに居るべき場所が変わり、やるべきことも変わる。そういうことが選手一人一人がわかっていることのほうがシステムより大切だとグアルディオラは言っています。(システム=決まりごと)その先に一人一人が何を考えてどう動くのか?

結局は選手それぞれが同じ目的に向かって自分達で考え、行動することが第1で、それをサポートするのがシステムかもしれません。

日本人は監督に怒られないようにすることを気にしてしまいがちですが、大切なことは監督に気に入られることよりもチームが勝つことです。

どうしてもシステムというとその中で決められたことだけをやればいいと思いがちですが、システムはゴールではなく、ゴールに行くための手段に過ぎないわけです。

 

『システムは誰のために 』

サッカーのシステムの目的はチームの勝利であり、『地域包括ケアシステム』の目的は高齢者が最後まで住み慣れた環境で自立した生活を送れるように細かい垣根をとっぱらってチームで協力することです。

システムのための活動ではなく、高齢者のための活動でなければならない、そして他の何かに寄り添うのではなく高齢者の方々に寄り添ったものでなければならないはずです。

そうでなければ絵に描いた餅になりそうです。

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