『様々な高齢者見守り活動』

近年、ひとり暮らしの高齢者の増加にともない、孤独死が社会問題ともなっています。かつてのような「向こう三軒両隣」といった濃密な近隣関係は希薄になり、地域の支え合い機能は低下しつつあります。

こうした現状を改善するために、各自治体などで行われているのが「見守り」活動です。地域において見守りが必要だと感じられる方の自宅に、定期的に訪問をしたり、茶話会やイベントを開催し、参加してもらうことで安否確認に繋げたり、そのやり方は様々です。

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photo by Luis Hernandez-D2k6.es

 

■日常生活の行動を利用した見守りシステム

佐賀県伊万里市、長崎県松浦市一帯をサービスエリアとする西海テレビでは、ちょっと変わった「高齢者見守りシステム」を導入しています。そのシステムはテレビのリモコンを使用して、遠く離れた所に住む家族に使用状況をメールで知らせるというもの。

高齢者がリモコンでテレビの操作をすると、「テレビの電源ボタンが押されました」というメールが届くだけでなく、一日の操作履歴も配信されてきます。さらに、このセンサーには温度を感知して、室内が異常高温などになった時や一日の温度記録なども配信されます。

こうしたメールが届くことによって、電源操作が長時間されていない場合には、何かあったのではないかという事にも気づきやすくなるだけでなく、このシステムを切っ掛けに連絡を頻繁に取るようになり、コミュニケーションが深まるなど、利用者の方からは喜ばれているそうです。

実際にこのシステムのお陰で、大事に至らなくて済んだ方の体験談がホームページに記載されていましたのでご紹介します。

今年の7月のことです。独り暮らしをしている実家の父宅に見守りセンサーを設置していますが、その日は朝6時頃のリモコン操作メールがきた後、夕方19時を過ぎても次のメールがきませんでした。気になって実家に連絡すると、受け答えの様子がおかしく、実家へ駆けつけたところ、父がぐったりとして椅子に座っていました。朝から食事もできないくらいに具合が悪く動けずにいたようです。すぐに病院へ連れて行き、結果的に二週間入院することになりました。
翌日はかなり蒸し暑い日だったので、あの時電話をしていなかったら、具合が悪いまま熱中症になって大変なことになっていたかもしれません。今は退院して元気に暮らす父。あの時気になって、電話をする切っ掛けをくれた見守りシステムに感謝しています。

こうした見守りシステムなども、今後の高齢化社会に向けて必要となってくるものの一つなのかもしれませんね。

『昔懐かしい「歌声喫茶」の再来』

夜な夜な皆が生演奏に合わせて歌う昭和の大衆文化「歌声喫茶」が、40年以上の時を経て、再びブームとなりつつあります。

■歌う列車「歌声列車」

とある日曜日の昼、千葉県市原市にある五井駅に停車中の小湊鉄道の先頭に、いつもと違うヘッドマークのついている列車が。ヘッドマークに書かれているのは「歌声列車」の文字。この列車、その名の通り列車に乗りながら歌を楽しむための列車なのです。

2009年から始まり、年に数回走ると言うこの歌声列車、60代以上のシニア層に大変人気の列車で、今年の12月には第48回を数えますが、毎回定員50名の席は予約開始後間もなくして売り切れるほど。

五井駅を出発した列車は、終点の上総中野駅で30分弱の休憩を挟んで、また五井駅へと戻ります。その車中約2時間半、昭和歌謡や童謡などを、アコーディオンの生伴奏に合わせて歌いまくります。小湊鉄道は、列車そのものが昭和の懐かしい雰囲気を演出してくれるので、参加者は皆若かりし頃に、まるでタイムスリップしたかのような気持ちになれます。

五井駅から夷隅郡大多喜町の上総中野駅までの39.1kmを結ぶ古き良き鉄道風景がいきる小湊鉄道の路線。春には桜や菜の花の絨毯を眺めることもでき、旧国鉄時代の懐かしいディーゼル車が今もなお現役で走っていて、18駅あるほとんどの駅は昭和初期の開業時からの木造の駅舎という、懐かしい風情を楽しめる列車です。

場所こそ違いますが、この歌声列車は皆が大声で歌を楽しむ様子が、まさに昭和の大衆文化「歌声喫茶」そのものではないでしょうか。

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Photo by soygcm

 

■歌を歌うことは脳の刺激に

シニアにとって大声で歌を歌うことは、声を出す刺激に加え、音楽の楽しさが脳に刺激を与え活性化します。特に昔懐かしい歌というのは、その歌にまつわる古い記憶や情景、情感などを呼び起こすことに繋がり、より強く脳を刺激してくれます。人間は最近の記憶よりも古い記憶の方が鮮明に覚えているものです。認知症の患者さんでも、歌だけは記憶していることも多いことから、音楽療法を治療の一環として取り入れているところも多いです。

こうした小湊鉄道で行われている「歌声列車」と同じような取組をしている鉄道は、他県にも多くあると聞きます。皆さんの住んでいる地域にも、ひょっとしたら歌を楽しめる企画があるかもしれません。是非見かけた時には一度参加してみてはいかがでしょうか。

『シニアに増加中の栄養不足』

「最近歩くスピードが遅くなった」「歩幅が狭くなった」と感じることはありませんか?

年齢を重ねて行けば歩くスピートが落ちたり、歩幅が狭くなるのなんて当たり前じゃない?と思われがちですが、実はこの原因は「栄養不足」にあることをご存知でしたか?シニア層では一見元気そうでも「栄養不足」に陥っている人が少なくありません。

「食事はしっかりと摂っているから大丈夫」と思われる人もいるかもしれません。しかし「食事量」と「栄養」は必ず比例するわけではなく、しっかりと食べているようでも栄養が不足してしまう事があるのです。その原因は大きく2つあります。

 

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Photo by Greyerbaby

■消化吸収力の低下

若い人とシニアで、全く同じ食事を摂ったとしても、体内に吸収される栄養の量が違ってしまいます。これは消化吸収力の低下によるものです。消化吸収を担う消化器官は他の臓器に比べ、歳とともに衰えるということはほとんどありません。消化吸収力が低下してしまう理由は、消化液の分泌が低下することによって起こります。

■食事内容に問題

食事量はそこそこ摂れているのに栄養不足になってしまうのは、食事内容に問題があることが考えられます。年齢を重ね、肉などの脂っこいものが苦手になったと言う人はいませんか?シニアでは、脂っこい食事よりも野菜などさっぱりとした食事を摂る傾向にあります。体にとって良さそうに見える野菜料理ですが、これではタンパク質が不足してしまいます。

筋肉や血管、血液を作ってくれるのは、主にタンパク質です。これが不足してしまっては、丈夫な体と作る事ができません。本来、消化吸収力が低下しているシニア層では、若い人よりも多くタンパク質を摂取しなければならないのですが、それができなくなることで「栄養不足」の状態が起こってしまうのです。

こうした「栄養不足」は、筋肉が衰え歩くの遅くなったり歩幅が狭くなるなどの原因となるだけでなく、免疫力の低下や血管や臓器がもろくなる原因にもなります。そこから肺炎などの感染症や脳出血などの脳卒中、心疾患、寝たきりなどといった重篤な病気のリスクも高まります。

■シニアの栄養不足を発見するには?

正確に栄養不足かどうかを調べてみるには、一番は血液検査を受けて、血清アルブミン値を調べることです。血清アルブミン値は、血液中の主要なタンパク質を調べるもので、栄養状態を知るための一つの指標となります。血清アルブミン値は3.5g/dl以下だと不足を指摘されます。

東京都健康長寿医療センターでは、この血清アルブミン値などの血液成分と生存年数や病気との関連を調べています。その結果アルブミン値が低い人はそうでない人よりも生存率が低い、つまり長生きできない傾向にあるということがわかったそうです。

アルブミンは、肉や魚などのタンパク質を素に体内で作られるものです。加齢によってこのアルブミンを作る力自体も低下してしまいますので、意識して肉や魚などのタンパク質をしっかり摂る必要があるのです。

現在では、こうしたシニアの栄養不足を改善するために、食事会を開催したり料理教室を開催したりする自治体も増えています。そうした活動を利用しながら、栄養不足の改善に努めることも大切なのではないでしょうか。