『 シニア ✖︎ ヒップホップ 』


30度を超える暑い日が続いていますが、暑い日本とは真逆なのが南半球のニュージーランドです。今が冬のニュージーランドは平均気温が12〜16度、世界でも有数のスキーやスノボーの名所でもあり、そして冬はラグビーのシーズンで、あのオールブラックスの試合が見れたりするようです。

そのニュージーランド最大の都市オークランドからフェリーで約40分のところに人口8000人ほどの小さな島、ワイヘキ島があります。

ワイヘキ島はブドウ畑が多く小さな島に20〜30軒ほどのワイナリーが点在し、また芸術家も多く住んでいてギャラリーなどもあり、ワインとアートの島として知られています。

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この島から、後にギネスに世界最高齢のダンスグループとして登録された『ヒップ・オペレーション』(THE HIP OP-ERATION CREW)が誕生します。ヒップ・オペレーションとは”腰骨の手術”という意味でメンバーの多くが腰骨の手術を受けているからということからつけられたグループ名です。

この平均年齢83歳のヒップホップグループ、『ヒップ・オペレーション』を始めようとしたのはビリー・ジョーダンという若い女性です、実は彼女自身ダンスや振り付けの経験もなく、ただお年寄りが好きで「お年寄りに冒険をしてほしい、”いつも通りの日々”から一歩踏み出してほしかった」という理由から、地元のモーラ公民館で一緒にヒップホップの練習を始めます。そしてビリーはヒップ・オペレーションの振り付け師兼マネージャーとして奮闘して、ついにラスベガスで行なわれるヒップホップの世界大会に出演してしまうというびっくりするような本当の話があり、ドキュメンタリーで映画化もされています。

この映画「はじまりはヒップホップ」(原題)【Hip Hop-eration】ではドキュメンタリーですから役者は出てきませんが、とにかく島に住む一人一人のお年寄りが魅力的です。あるお年寄りは立つことが出来ないので車椅子のまま手だけを動かしてダンスをしたり、とにかくみんな優しくて可愛いらしくてユーモアのあるお年寄りがたくさん登場します。

そしてオークランドの学生達のダンスグループ”デザイア・ダンス・アカデミー”と出会い、自分達の孫のような学生達から教えてもらい、学生達もお年寄りからダンス以外のものを学びます。

またラスベガスまで行くには様々な困難が出てきます、持病や、認知症の家族、ラスベガスまでの旅費やパスポートなど、それをビリーやお年寄りが力を合わせて乗り越えていきます。

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そしてついにラスベガスのステージに立ち、名曲『Life Is For Living』が流れパフォーマンスがスタートします、お年寄りが力を合わせてダンスをする姿は本当にキラキラ輝いています、それを見た観衆が総立ちになり盛り上がるシーンは何回見ても感動的です。

〜『Life Is For Living』〜

【シニア世代よ立ち上がれ

みんなはトレンド

夢を追うレジェンド

年を重ね知恵がついても自分の本質は変わらない

16歳や25歳、32歳の頃と同じなの

まだ終わりじゃない

この先も輝く人生が待ってる

それが生きるってこと

仲間と支え合えば

全てを変えることだってできる

もう一度闘うのよ】

映画はDVD化されていますので、是非お勧めです。

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そして、日本でも兵庫県の加西市でシニアにヒップホップを教える試みがスタートしました。兵庫県の加西市で『Do-it』というボランティアグループがあります。

子育て、高齢者、障がい者サポートなど色々な地域課題に対してダンスを通じてまちづくりを実践し地域づくりに貢献していくという考え方のもと活動されています。

http://www.dancemaestro.jp/whatsdoit.htm

その『Do-it』がシニア向けのヒップホップのダンス教室を今年からスタートしています。7/23にも開催されるようなので行ってみようと思いますので、また報告させていただきます。

 

 

ヒップホップは諸説あるようですが1970年代のアメリカのブロンクスで生まれた文化でヒップは「意識を持った」、ホップは「ダンス」という意味があるようです。

超高齢社会のいま、そして2011年から小学校、2012年から中学校もダンスの授業が始まるなどより身近な存在になってきているダンス、シニアの自立に向けての意識をもった新しい形がヒップホップにあるのかもしれません。

 

『 おせっかい 』


Googleのレイ・カーツワイル氏によると2029年に人間の知能をコンピュータが超え、2045年までにはAI(人口知能)の発達もあり社会が飛躍的に変化するシンギュラリティ(技術的特異点)がおこると予測しています。医療やエネルギー、環境などの問題が解決していき、人間の寿命がさらに伸びるなどと言われ、なんだか驚くような信じられないような話が起こる可能性があるようです。

レイ・カーツワイル氏は50代で心臓発作で亡くなった父親とAI の技術を使って再び会話をしたいと考えているようです。

 

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2045年はまだ先の話ですが、すでにAI の登場によって掃除機から自動運転まで様々な変化が身の回りでもおきています。

また人口知能の苦手分野だとされていたクリエイティブな仕事までAI が活躍して、オペラを作曲したり、絵を描いたり、より機械化が進んでいます。

世界的に高齢社会を迎えるなか、医療や福祉の分野でも注目されています。茨城県つくば市にある企業サイバーダインでは病気などで身体機能が衰えた方向けのロボットスーツ「HAL」を開発しています。

 

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身体が発する電気信号を感じ取り、その電気信号をもとにコンピュータがロボットスーツを動かす仕組みで、動かない身体を動かすとことが出来るという夢のようなロボットスーツそれが「HAL」です。

 

 

 

 

そして介護などでの素晴らしい機械化が進む一方では、AI に仕事が奪われるのではないかという問題も出てきています。

2013年9月にイギリスのオックスフォード大学のマイケル・オズボーン博士らが発表した論文「雇用の未来:私たちの仕事はどこまでコンピュータに奪われるか?」によると、今ある職業の47%がAI に奪われると予測されています。

駅に行けば昔は切符を切る駅員さんがいましたが近頃ほとんど見かけなくなりました、映画館でも窓口ではなく機械でチケットを買ったり、より効率的で合理的な世の中になってきていて、それはもうかなり前から変化が始まっているんだと思います。

 

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無駄がない効率的な社会は悪くないかもしれません、ただしそれはそこにいたはずの人がいなくなることにもなり、人と人が触れ合う機会が減るのではないかとも思います。そんなことないSNSがあるじゃないかと思う人もいるとは思いますが、実際に人と人が面と向かって会うのとでは違う気がします。

 

 

昔がいいと言っている訳ではないのですが、例えば私が子供の頃は、月に数回は酒屋さんが家に来てキリンビール1ケースと時々親の機嫌がいいときにはバヤリースを届けてくれていました。玄関先で母親と酒屋さんがしばらくあーでもないこーでもないと雑談をしたりしていたのを覚えています。

今だとネットで頼めばすぐに届きますし、もっと安いと思います。昔は色々な理由があってのことだとは思いますがそういう人と人が触れ合う機会が多かった気がします。

 

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そういう人付き合いが、私は正直苦手なほうでした。子供の頃に特に嫌だったのは、髪を切ったら近所の人に「髪切ったなぁ、男前なったなぁ、」と言われたりするのは恥ずかしくて嫌だなぁとよく思っていました、まあ、家を出ると挨拶をする人がたくさんいて息苦しいとも思っていた気がします。

 

 

ただ最近はそういう人付き合いが実は大切で意味があるんだと感じています。地域活性のイベントのお手伝いをさせてもらったり、シニアの自立支援のプロジェクトをしているときにも共通している気がしています。

昔は良いも悪くも”おせっかい”な人がいて人のことに口を出してくるんですよね、知らないおじさんに怒鳴られたり、頼んでもないのに世話好きなおばちゃんなんかが色々教えてきたり、、そういう人が昔に比べて少なくなってきた気がします。どこか自分さえ良ければいいという、人間関係が希薄になっているように感じます。

”おせっかい”な方は、言いたくて仕方がないというのもあるとは思いますが、それ以上にその人のためになればと思って言ってくれているんだとも思います。

 

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今は見て見ぬふりをしたほうがいい、面倒なことには関わらないほうがいいという風潮がある気がします。

 

これからの時代はより合理的に効率的に進んでいくと思いますが、この高齢社会を乗り越えるには自分さえ良ければいいとか、与えられた役割さえすればいいという考え方だけではなく、ちょっと”おせっかい”ぐらいの人付き合いが出来るような関係性が大切になるのかもしれません。

『 ちゃんとちゃんとの学校 』

待ったなしの高齢化問題に対して大切なことは高齢者の方々が”いつまでも自分のことは自分で出来る”ことじゃないか、ということで始まったチャントチャントプロジェクトですが、そのシニアの自立についてみんなで学んでいこうというイベント『ちゃんとちゃんとの学校』がなんとか無事に開催することができました。ご協力いただいた皆様、そして御参加いただいた皆様には本当に感謝しております。ありがとうございました。

月末の忙しい時期にも関わらず問題意識を持った熱心な方々にお集まりいただいてとても有意義な時間を共に過ごさせていただいたと感じています。

 

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日本はどこの国も経験したことのない超高齢社会を迎えています、今後それは海外の国々も同じような状況になっていくと言われ世界中が日本の高齢化対策に注目しています。

今から8年後、東京オリンピックが終わりその後にやってくるのが2025年問題とよばれている問題です。

2025年はいわゆる団塊の世代と言われる世代の方が75歳になる年になります。国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という状況は、今でさえ問題になっている医療費をさらに圧迫し、介護の面でも今以上に介護を受けること自体が難しくなります。そして年金問題、少子化、増える認知症などを考えるとどう考えても現状のままではうまくいくわけがありません。

 

そしてそれは決して人ごとではなく誰にも関わってくる大きな問題です。

 

このプロジェクトのきっかけは3年前にプロジェクトのプロデュースをしてくれているパークスターズ代表の幸田リョウ氏とミタニホールディングスの代表の三谷浩幸氏とプロジェクトリーダーをさせてもらっている広納の3人で食事をしている時に、これからの時代は高齢者の方々がただ長生きだけでは無くて、元気で長生きしてくれていることが高齢者の方々にも、周りの人にとっても社会にとっても一番大切なことだと、そのために出来ることを少しづつでも始めようというところから始まりました。

 

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チャントチャントプロジェクトではシニアの自立を3つのテーマにわけて考えています。

1.いつまでも自分のことをチャントできる

2.いつまでも好きなことをチャントできる

3.いつまでもチャント頼られる

このテーマにそってシニアの自立(チャントする)につながるような取り組みをシニアと関わるお仕事についている方々が中心になって応援(CHANT)していこうというプロジェクトがチャントチャントプロジェクトになります。

『ちゃんとちゃんとの学校』では2ヵ月に1回、シニアに関わる方や、関心がある方にお集まりいただきみんなでシニアの自立について学んでいこうというイベントで、毎回ゲストをお迎えして様々な角度からシニアの自立をテーマに参加される方々と一緒に学び考えていく予定です。
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初回のゲストは(株)ジャパンケミカルインダストリー代表取締役である田中俊樹社長に来ていただき「そうじを通して心が変わる」という素晴らしい授業をしていただきました。率直な感想は初回のゲストとして来ていただいて本当に良かったと思いました。人が変わり、それが周りの人にも影響して街も変わるという話がありました。私が印象的だったのは街路樹の周りのゴミ掃除をした後に地域のシニアの方々と花を植えるという話です。それは田中社長が掃除をただの作業とは考えていなくて、掃除を通して少しでも地域の方々の心が優しくなればという考えから自然と始まったのではないかと思います。そういう気持ちから発生したことだからこそ多くの人が共感されたのではないかと思いました。

 

そしてプロジェクトをスタートした3人のうちの1人の三谷社長は今回参加出来なかったんですが、今回参加者の方々に使って頂ければということで、シニアの自立に関わるミタニホールディングスの商品で健康な体を作るタンパク質が豊富に含まれているこだわりの卵(アレルギーの人も食べれるという)、そして骨が弱くなると寝たきりの原因にもなるということでカルシウムを配合した珍しい焼肉のタレもプレゼントがありました。

 

 

 

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ちゃんとの学校のあとにユニバーサルデザインフード(年齢や障害のあるなしに関わらず、普段の食事から介護食まで、出来るだけ多くの人が利用できるように考えられた食事で、硬さなどが4つの区分に分けられています)を食べながら参加者の方々と交流させていただきました。参加していただいた方々は本当にシニアの自立について真剣に考えていらっしゃってご自身の仕事や得意分野などで何か一緒に出来ないかという方々ばかりで、逆にこちらが勇気をいただきました。まだまだ始まったばかりのプロジェクトで思うようにはなかなかいかないですが、どうせやるなら本当にシニアの自立につながる意味のあるものにしていこうと強く感じました。

 

 

最後にプロジェクトを応援していただいている東京大学名誉教授の眞鍋昇先生が、ついこの前に言われていた言葉を取り上げさせてください。それは『日本は今、ゆでガエルになろうとしている』という言葉です。ゆでガエルとは熱湯の中にカエルを入れるとカエルは熱さにビックリして熱湯から飛び出ます。一方あらかじめ水の中にカエルを入れて徐々に熱を加えていくとカエルは温度の変化に気がつかずにゆでガエルになってしまうという話です。この話はアメリカのグレゴリー・ベイトソンという思想家の寓話で実際にはそうはならないようですが、要は人間は急激な変化には危機意識が働き、緩慢な変化には対応が出来ないという内容のようです。

 

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ジワジワと確実に進んでいる日本の超高齢社会の問題が、決して人ごとでは無く自分にも関わる問題だと感じてもらえるような、そして何かを始めるきっかけになるようなプロジェクトでありたいと思った言葉でした。もう私達は水の中にいます。