『 未来はみないで 』

デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)とはボーっとしているときに動いている脳のネットワークのことです。

無意識にぼんやりと過去のことを思いだしたり、未来のことを想像したりする活動のことで、ボーっとしていることは過去の記憶の整理や未来予測などに役立っているようです。

「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と5歳児に怒られる必要はないわけです。

ただこれが過剰になると不安感が強くなったり、起こるかどうか分からないことまで心配したりして、精神疾患の原因にもなるようですからそのあたりが難しいところです。

ちょうどいいのがちょうどいいということでしょうか。

そんなデフォルト・モード・ネットワークの中、シーズン3のことを考えています。

 

『 劫 』

劫(こう)とは仏教などインド哲学の用語で、極めて長い宇宙論的な時間の単位のことなんだそうで、よく使う「年の功」とは元々は「年の劫」と書いていたと言われています。

長い人生では誰もが様々なことを経験して生きていますが、その経験の中にはたくさんの記憶があります。

美味しいものを食べたという記憶であれば、それはその味だけではなく食べた場所や香りや盛り付けられた器、一緒に食べた人やその人と交わした会話なんかも一緒に覚えていると思います。

記憶は見たものや聞いたもの、匂いや肌触り、そのときの天候だったり、そのときの感情などの”情報のかたまり”で全く同じ体験をしたとしても、どの記憶が長くとどまるかは人によって違います。

長く生きれば生きるほどたくさんの経験をするわけですから、全てを記憶に留めておくことは出来ません。

やはりその人が大切にするものが長く記憶として残るんじゃないでしょうか。

あらゆる動物が記憶をもとにして危険から身を守るように、人間の場合は記憶が身を守ることだけではなく、長い時間をかけて”その人らしさ”をつくっていくんだと思います。

 

 

久しぶりに実家に帰ったときのことです。

母親が某うどんチェーン店の対応に怒っていました。それは持ち帰りの天ぷらに異物が入っていてそれを持っていったら、散々待たされた後に商品券を渡されたというのです。

母親は「私は商品券が欲しくて来たんじゃない、きちんと謝ってくれたらよかったのに」と商品券を受け取らず帰ってきたと言っていました。そしてもう二度とあんな店にはいかないと怒っていた母親を見て、私はなぜか嬉しく思いました。

それが母親らしいと思ったからかもしれません。

 

『 最も個人的なこと 』

ついこの前に行われた第92回アカデミー賞で『パラサイト 半地下の家族』が脚本賞、国際長編映画賞、監督賞、作品賞と4つのオスカーを獲得しました。

「本当にありがとうございます。私が映画の勉強をしていた時に、本で読んだ言葉で、今も大切にしている言葉があります。『最も個人的なことは、最もクリエイティブなことだ』という言葉です。これは、マーティン・スコセッシの言葉でした。私は、彼の映画を見て勉強したんです。一緒に監督賞にノミネートされただけで嬉しい」

というポン・ジュノ監督のスピーチに感動しました。

そして『最も個人的なことは、最もクリエイティブなことだ』という部分は、確かに確かにと強く共感しました。

 

『 未来はみないで 』

ちゃんとちゃんとの学校で昨年開催した『100歳図書館』という企画があります。

人生最高の1枚の写真を選び、自分だけのストーリーを語り、そして対話する『100歳図書館』はちゃんとちゃんとの学校らしさが全て詰まった内容でした。

そしてマーティン・スコセッシがいうところの『最も個人的なことは、最もクリエイティブなことだ』ということを感じた企画でもありました。

ありがたいことに長く生きていける時代になりました。

そしてその分たくさんの記憶があり、その中には誰かを勇気づけるような、生きていくエネルギーを与えてくれるような、とても個人的な、とてもクリエイティブな、どこにも売っていないストーリーがあるはずです。

ちゃんとちゃんとの学校では今年、シニアのジリツを支援する『100歳図書館』のような企画や、クリエイティブなシニアが”歳を重ねることの新たな価値”をつくるような、そんな素晴らしい授業をもっと多くの場所で開催していけたらと思っています。

そして運営側に入って一緒に活動してくれる仲間を募集しようと思っています。

これからは「ウルトラス」という名前にして、それぞれがちゃんとちゃんとの学校のリーダーとして、新しいちゃんとちゃんとの学校をつくっていけたらとシーズン3は思っています。

 

考えてもどうにもならないことや、あまりにも大きな問題を前にすると、何をしてもどうせ変わらないからと思考が停止することがあります。

何も考えないほうが幸せだという考え方も間違えではないのかも知れません。

でも考えることから逃げてばかりではいけないわけで、やっぱりできることからひとつひとつ取り組んでいくしかないと思います。

ここんところ宙ぶらりんで全然出来ていない自分にがっかりしながら、未来を見るためにはしっかり今を見ることが大切なんだと痛感しています。

とにかく新たなスタートです、ぜひ気軽にちゃんとちゃんとの学校の職員室までお越し下さい。

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