『 生きる理由 』

奄美大島からJACの飛行機で10分ほどで到着する喜界島は “何も無くて素晴らしい” とtripadvisorでも評判の1周48キロほどの小さな島です。

島の大半が隆起サンゴ礁で出来ている喜界島は島一面にサトウキビ畑が広がり、そのサトウキビから作られる黒糖や黒糖焼酎でも知られています。

 

その喜界島で1900年8月4日に生まれた田島ナビさんが今月の21日午後7時58分に、老衰のためお亡くなりになりました、19世紀から21世紀まで生きてこられた117歳8ヶ月は世界最高齢でした。

1900年というと、ナチス・ドイツから迫害されていた多くのユダヤ人を助けた”東洋のシンドラー”と言われた外交官、杉原千畝(すぎはら・ちうね)、スポーツメーカーのアディダスの創業者アドルフ・ダスラーが生まれた年になります。ウォルト・ディズニーが1901年生まれなので田島ナビさんはウォルト・ディズニーの先輩になるわけです。

また1900年にはパリ万博が開催されエッフェル塔が建設されたり、伊藤博文が内閣総理大臣に就任、日本初の自動公衆電話の設置されたり、また翌年の1901年にノーベル賞が創設されるなど歴史を感じます。

 

AFP通信によると、4月16日、メキシコの南部チアパス(Chiapas)州の州都トゥストラグティエレス(Tuxtla Gutierrez)にある高校にグアダルーペ・パラシオス(Guadalupe Palacios)さんという女子高生が初登校したとニュースになりました、年齢は96歳です。

貧しい家庭に育ち学校には通えなかったグアダルーペ・パラシオスさんは、92歳になったときに読み書きの勉強を学び始め、中学校の課程まで修了し、そして96歳の女子高生が誕生したようです。幼稚園の先生になることが夢なんだそうです。

 

『命をつなぐ』

サーモンミュージアムによると、サケは産卵期を迎えて川を遡上すると、オスとメスがペアになって川底を掘り産卵床を作ります、それからメスが体を震わせながら卵を産み落とし、寄り添うようにオスが放精し、また卵を埋めるようです、これを3〜5回繰り返して、メスは産卵床を守りながら、オスは他のオスが近寄らないように守りながら死んでいきます。交尾を済ませると”死ぬスイッチ”のようなものが入って死ぬようです。そして親の死骸がこれから卵が育つ川の栄養になるわけです。

他にも交尾を終えると死ぬ生き物が多くいます、カマキリが交尾の最中にメスがオスを食べるという話は有名ですが、それもメスが産む卵により栄養を届けるためのようです。人間で良かったと思える瞬間です。

生きる理由のひとつは、命を繋いでいくことなんだと思います。

またメスがこのオスとは交尾をしたくないという場合に、追いかけてくるオスに対して、空中から墜落して死んだフリをするルリボシヤンマというトンボもいるようです。オスからすると、なにもそこまでやらなくてもと思いますが、これもより良い命を繋いでいくためなんだと思います。

 

『生きる理由』

柳澤桂子さんの著書『われわれはなぜ死ぬのか?』によると

女王蜂は交尾を繰り返し500万もの精子を体内に蓄え、それを受精しつくすとオスに殺されるという話や、メタセコイアという木は分裂組織の増殖能力が無限で、つまり樹齢に関わらず老化しない、死なない木だったり、興味深い内容です。

DNAでは死がプログラムされていて赤ちゃんが生まれる10ヵ月も前から、つまり受精の瞬間から死に向かって進み始めていると考えるようです。赤ちゃんが大きくなって、そのうち大人になり、さらに時が進み老化が始まると思いがちですが、実際には老化は受精した瞬間から始まっていることになるんだそうです。

ただ単に死に向かっているだけではなく、たった一つの受精卵が60兆もの細胞になり、脳が発達し、喜怒哀楽を感じ、考え、学習すると考えると、子供の頃は果てしなく長く感じ、今はそんなに長くはないと思うこの “生きている時間” がより大切に感じます。

 

『死は生の終着点のように思われているが、決してそのようなものではない。死は生を支え、生を生み出す。受精の際には、たくさんの精子が死に、残された一つの精子によって生命が誕生する。一つの生のためにおびただしい数の死が要求されている。死は生とおなじようにダイナミックである。
生命の歴史のなかでは、生と死はおなじ価値をもつ。生きている細胞より、死んだ細胞の数の方がずっと多いという意味において、それは死の歴史であるともいえる。36億年の生命の歴史のなかに編み込まれた死を避けることはできないし、それは避けてはならないものである。死によってこそ生は存在するのであり、死を否定することは生をも否定することになる。』

 

とてもとても考えさせられる『われわれはなぜ死ぬのか?』でした。

 

 

『サンゴ』

サンゴは植物のようで動物ですが、寿命が長く500年から1000年、徳島県にある直径10メートルにもなる「千年サンゴ」は1700年くらいは生きているのではないかといわれています。

田島ナビさんはそのサンゴで出来た島で117年もの生涯を終えられたわけですが、田島さんには2011年の段階で子供が9人、孫が28人、ひ孫が56人、玄孫(やしゃご)が35人いたそうで、2015年には玄孫の子を来孫(らいそん)というようですが、その来孫を含めると140人以上にもなるようです。あらためて多くの命を繋いで来られた田島ナビさんの凄さを感じます。

生き物には当たり前のように寿命があり、36億年もの生命の歴史と同様にいつかは死ぬ運命ですが、人間は子供を産んだ後も長く生きる珍しい生物です。

もしかしたら生きている理由は、他にもあるのではないかと思えて仕方がありません。

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