「最近歩くスピードが遅くなった」「歩幅が狭くなった」と感じることはありませんか?
年齢を重ねて行けば歩くスピートが落ちたり、歩幅が狭くなるのなんて当たり前じゃない?と思われがちですが、実はこの原因は「栄養不足」にあることをご存知でしたか?シニア層では一見元気そうでも「栄養不足」に陥っている人が少なくありません。
「食事はしっかりと摂っているから大丈夫」と思われる人もいるかもしれません。しかし「食事量」と「栄養」は必ず比例するわけではなく、しっかりと食べているようでも栄養が不足してしまう事があるのです。その原因は大きく2つあります。
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■消化吸収力の低下
若い人とシニアで、全く同じ食事を摂ったとしても、体内に吸収される栄養の量が違ってしまいます。これは消化吸収力の低下によるものです。消化吸収を担う消化器官は他の臓器に比べ、歳とともに衰えるということはほとんどありません。消化吸収力が低下してしまう理由は、消化液の分泌が低下することによって起こります。
■食事内容に問題
食事量はそこそこ摂れているのに栄養不足になってしまうのは、食事内容に問題があることが考えられます。年齢を重ね、肉などの脂っこいものが苦手になったと言う人はいませんか?シニアでは、脂っこい食事よりも野菜などさっぱりとした食事を摂る傾向にあります。体にとって良さそうに見える野菜料理ですが、これではタンパク質が不足してしまいます。
筋肉や血管、血液を作ってくれるのは、主にタンパク質です。これが不足してしまっては、丈夫な体と作る事ができません。本来、消化吸収力が低下しているシニア層では、若い人よりも多くタンパク質を摂取しなければならないのですが、それができなくなることで「栄養不足」の状態が起こってしまうのです。
こうした「栄養不足」は、筋肉が衰え歩くの遅くなったり歩幅が狭くなるなどの原因となるだけでなく、免疫力の低下や血管や臓器がもろくなる原因にもなります。そこから肺炎などの感染症や脳出血などの脳卒中、心疾患、寝たきりなどといった重篤な病気のリスクも高まります。
■シニアの栄養不足を発見するには?
正確に栄養不足かどうかを調べてみるには、一番は血液検査を受けて、血清アルブミン値を調べることです。血清アルブミン値は、血液中の主要なタンパク質を調べるもので、栄養状態を知るための一つの指標となります。血清アルブミン値は3.5g/dl以下だと不足を指摘されます。
東京都健康長寿医療センターでは、この血清アルブミン値などの血液成分と生存年数や病気との関連を調べています。その結果アルブミン値が低い人はそうでない人よりも生存率が低い、つまり長生きできない傾向にあるということがわかったそうです。
アルブミンは、肉や魚などのタンパク質を素に体内で作られるものです。加齢によってこのアルブミンを作る力自体も低下してしまいますので、意識して肉や魚などのタンパク質をしっかり摂る必要があるのです。
現在では、こうしたシニアの栄養不足を改善するために、食事会を開催したり料理教室を開催したりする自治体も増えています。そうした活動を利用しながら、栄養不足の改善に努めることも大切なのではないでしょうか。