『 シニアの時代 』

中学1年生になる子供に「歴史なんて面白くない、なぜ勉強しなきゃいけないの?」と聞かれて困ったことがあります。自分自身もあまり好きではなかったからです。

 

しばらくしてから、たまたま本屋で手に取った本が『ライフネット生命』を作った出口治明さんの本でした。歴史の本ですが非常に面白くて、なるほどなぁと思うことがたくさんありました。

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“ペリーが日本にやって来た本当の理由は?”

日本史だけを考えると幕末に浦賀沖にペリーが黒船で来航したという事実だけですが、アメリカの歴史から考えると当時のアメリカは大英帝国と対中国貿易においてライバル関係にあって、従来の大西洋から中国に向かルートでは距離の問題でライバル大英帝国には勝てない、ということで新たな太平洋から中国に向かうためのルートがつくられ、その中継地点として日本が選ばれ、その目的でペリーが来たというのがアメリカ側の歴史には書かれているようです。

そして長く鎖国していた日本は開国した時にアメリカ側に有利な条件で為替レートを決められてしまい。日本から大量の金が出ていってしまい、日本は貧しくなり、それが幕府が崩壊した大きな原因になったようです。

 

世界の歴史は何度も何度も争いを繰り返しながら続いていて、人間は同じようなことを繰り返しやっている。世界の長い歴史を学ぶということは今の時代を理解する上でも、また未来のことを考える上でも重要ではないかと考えさせられる内容でした。

 

同じようなことを繰り返している世界の歴史ですが、今の日本のような超高齢社会はなかったのではないでしょうか?

 

日本は世界が歴史上未だ経験したことのない超高齢社会に突入しています。

日本の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合が26.7%となり、『4人に1人が高齢者』ということになり、さらに2035年には33.4%つまり『3人に1人が高齢者』と予測されています。

コンビニでも高齢者向けの少量の惣菜や宅配サービスなどに力を入れています、またスーパーでも軽い買い物カートや速度の遅いエスカレーターの導入など、赤ちゃん用のオムツより成人用のオムツが売り上げが上回る時代になっている今、各企業が超高齢社会に向けて様々な対策を始めています。

 

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今までシニアに関わる仕事についている人だけだったシニアの方々とのコミュニケーションも、今後は全ての仕事にも関わってくると思います。

 

私はシニアの方々とコミュニケーションをとる仕事でもあるので普段から気をつけていることがあります。

①第一印象が全て

第一印象といっても見た目ではありません。まずはシニアの方々は非常に経験値が高いので、すぐにその人の本質的なものを見抜きます。うまく話をしようとかよく見られるように格好つけてもあまり意味がないと思います。それよりはまず自分のような若僧の話を聞いていただいて有難いと思い、その気持ちをもってお話しさせていただきます。そんなことかと思うかもしれませんがその気持ちから出てくる表情や仕草は言葉以上に伝わることだと思います。

 

②例え話を増やす

人間は難しい話は苦手です。特にシニアの方は難しい言い方や知らない言葉が出てくると心を閉ざしてしまいがちです。どんなに正しいことも分かりやすくなければ伝わらないです。

例えば骨密度が低下すると骨粗鬆症になる可能性が上がるので日頃から陽に当たることや適度な運動、食事ではカルシウムやビタミンC、Dやタンパク質をバランス良く摂りましょう。

と言うよりは、生の柔らかい木の枝と堅い枯れ木を目の前で折ります。生の木は弾力があるので折り曲げても中々折れませんが、枯れ木は直ぐにポキッと折れます。

例えばこの木が骨だとすれば枯れ木にならないようにするには・・・天気のいい日は散歩しましょう、時々肉も食べましょう、そして果物を食べると骨が丈夫になりますよと伝えた方がより伝わりますし、会話も始まりやすいです。

 

③敬語は使い過ぎない。

敬語は相手に敬意を伝えるためには最初の頃は非常に大切ですが、使い続けるとなかなか距離が縮まらない。

敬語は距離感が出来る言葉だと思います。

本当の意味で心を開いてもらうにはその方との心の距離感にあった言葉を選ぶことだと思います。シニアの方々と長く会話していると年齢のことをあまり考えなくなることがよくあります。人と人が打ち解けるときには年齢はあまり関係なくなるのかもしれません。

 

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私はシニアの方々とコミュニケーションさせていただくほど成長できることはないのではないかと思います。一言一言に重みがありますし、自分の事より周りの方のためにという方が多いです。なかなか最初は歳が離れていると会話をするだけでも緊張してしまいますが勇気をもって声をかけることが大切だと思います。スマホでは調べられないような話がたくさん聞けることもあります。

 

なぜシニアの方と会話していると楽しいのか?

それは実際に生きてこられた、体験されてこられた実体験にもとづいている、その方だけの歴史があるからだと思います。

 

『道を知っていることと、実際にその道を歩くことは、別物だ』

 

仮想現実を生きさせられている人類を描いた映画『マトリックス』の台詞です。

シニアの方とのコミュニケーションはとても勉強になります。是非勇気をもってコミュニケーションをとってみてください、何か大きな発見があるはずです。

 

『 CKDってご存知ですか? 』

新たな国民病と言われている病気があります。それが『CKD』です。CKD(Chronic Kidney Disease)とは2002年にアメリカの米国腎臓財団が提唱した概念で日本語で『慢性腎臓病』とよばれています。

日本では患者数が1330万人、成人以上の8人に1人にもなる慢性腎臓病は放置すると取り返しがつかない怖い病気です。

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腎臓は腰の辺りに2つある臓器で、握りこぶしよりは少し小さなサイズですが1日でドラム缶1本ほど血液の濾過を行い、血圧も調節します。人間が生きていくためにとてもとても重要な臓器です。

大切な腎臓ですが1度悪くなるとほとんど良くなることがないので腎臓病が悪化すると”人工透析”が必要になります。

人工透析患者数は32万人を超えており、世界の透析患者の6人に1人が日本人と言われ2025年までは毎年増加していくと予測されています。週に3回、4〜5時間かけて行う透析は日常生活に大きな負担になります。ある患者さんは「透析患者には盆も正月もないよ、死ぬまで2日に1回は病院に行かなきゃならない」と言われていたことがありました。

人工透析は患者の精神的、肉体的な負担は非常に大きく、そして医療費の部分でも大きな負担になっている現状があります。

年間500万円近くかかるとされる人工透析の費用は単純計算で1兆6000億円もかかっているということになります。

人工透析より患者にとってQOL(生活の質)が高く負担が少ないのが腎臓移植になります。ただ日本では厳しい移植の基準の問題などがあり、また透析の利権の問題もあり腎臓移植は海外に比べて積極的ではありません。

今週は兵庫県の尼崎市に来ています。

尼崎市といえばあのダウンタウンさんの出身地として知られていますが、今年市制100周年を迎えた尼崎市は腎臓病を予防する取り組みでも知られています。

2011年にNHKの『ためしてガッテン』で新たに透析を開始する患者数を3年連続で減らすことに成功したと紹介されたことがあります。尼崎市では透析療法は自治体にとっても大きな経済的負担になるので実際に透析をするようになった患者を調べていったようです。そうすると多くの場合透析の1〜4年前からしか受診しておらず、おそらく予防が間に合わなかったのでないかということで、ただ健康診断を受けるだけではなくその結果をチャートにして市民に配ったことが透析患者を減らした結果につながったようです。

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医療費の問題は深刻です。医学は日々進歩していきますが、本当の意味で健康でい続けることや医療費を抑えるには個人個人が病気を知り、予防していくことしかないと思います。

自分の身体は自分で守る”

『言うは易く行うは難し』ですがこれからは病気になったら医者に行くという考え方から、なるべく病気にならないように元気なうちから気をつけていくことが、自分の将来や子供や孫の時代までを考えていくと、より大切になっていく気がします。

『未来とは、今である』

アメリカの文化人類学者マーガレット・ミードの言葉です。誰もが出来ることなら人工透析はしたくありません、この先も健康でいれるかどうかは

今日どういう一日を過ごすのか”

にかかっているのだと思います。

 

『 選択 』

「人が1日に選択する回数は?」コロンビア大学のシーナ・アイエンガー教授によると平均的なアメリカ人の場合『1日で70回』の選択を下しているようです。

”選択”の捉え方が難しいので1日2万回という説もあるようですが、普通に暮らしている中でも朝何時に起きるか?どんな服を着るか?朝は何を食べるか?など知らず知らずの間に選択をしていると考えるとかなりの選択をしながら生活しているのだとあらためて思います。

 

『選択』について考えさせられた本があります、【欧米に寝たきり老人はいない】という本です。

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ご夫婦で内科医をされている著者の宮本顕二さんと宮本礼子さんは2012年に『高齢者の終末医療を考える会』を立ち上げて日本の終末医療の問題提起をしているお二人です。本では様々な立場の人達の意見や体験談、そして海外と日本との終末医療の違いなどが分かりやすく書かれていて興味深い内容です。

例えば日本では高齢になり食欲がなくなると”胃ろう”(お腹に小さな穴を開けチューブで胃に直接栄養を入れる栄養投与の方法)をすすめられることが多いようです。日本の病院では管に繋がれた寝たきりの患者が多く訪れた外国の医師が驚いたエピソードがあります。海外では自力で食べられなくなった場合は無理に食事を与えないのが当たり前のようです。欧米の医学生なら誰もが学ぶ有名な内科の教科書『ハリソン内科学』では「死期が迫っているから食べないのであり、食べないことが死の原因になるわけではない」書かれているほど当たり前のようです。

 

86歳の男性は点滴を抜いてしまうため両手をベッドの柵にしばられて、起き上がろうとするため今度は胴体も縛られたという日本に対して、スウェーデンでは患者の身体を縛ってまで医療はしないと言われたというエピソードや、患者が苦しむ延命治療はしたくないが様々な問題があり思うようにできないジレンマ、家族も延命治療をしたくはないが周りの目が気になりどうしていいかわからない方、自分の判断が正しかったのか悩み続けている方、あるいは年金受給のために延命治療を続ける例など様々な方の意見や体験が書かれている本を読んでいると、深く考えさせられます。

 

そして日本では80%以上の国民が望んでいない延命治療が、実際には終末期のほとんどの人に対して当たり前のように行なわれています。

その原因として、

①延命至上主義

②自分の意思を家族に伝えていない

③診療報酬や年金受給などの社会制度

④医師が延命措置を怠ったと訴訟を起こされる可能性

⑤倫理観の欠如

などがあるようです。

 

「人は最期まで人として生き、人として生きたいのでは?」生命維持装置で生かすのが博愛主義や人道主義だとの勘違いは即改めて、個人の人間性を守るために、完治する見込みのない高齢者の死ぬ権利を認めるべきだと思います。ほとんどの親は子供や孫に負担をかけずに静かに天寿をまっとうすることを望んでいるはずです。

 

というメールが私はとても心に残りました。

 

”いかに長生きするか”ということも大切ですが、”どういう生き方をするのか”ということもより大切になってくるのだと感じました。

チャントチャントプロジェクトは『シニアのライフデザインプロジェクト』というテーマでスタートしましたが、当たり前に過ぎていく日々の生活の中にある”小さな選択”が少しずつでも意識していくことで大きな違いになるものだと思います。

プロジェクトで行う小さなチャレンジのひとつひとつの積み重ねが、シニアの方がいつまでも自分らしく生きていけることにつながれば素晴らしいと思っています。

 

 

最後にオススメの映画です。

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舞台はイスラエルの老人ホーム、発明好きの主人公ヨヘスケルは病に苦しむ友のためにある発明をします。

最期まで自分の人生は自分らしく生きていきたいという映画でユーモアたっぷりですが、とても考えさせられる映画です。

邦題『ハッピーエンドの選び方』、『The farewell party』(送別会)です。